銀月短編2

□ごめん、ありがとう
1ページ/9ページ

深夜に帰宅した月詠は、上り框に脱ぎ捨てられた銀時のブーツをみて、眉を上げた。
泊まっているのかと思いながら月詠もブーツを脱いで、ひのやの住居スペースに上がる。
新八と神楽の履物は見当たらないから、一人で酒をタカリに来て、酔いつぶれでもしたのだろう。
大して強くもないのだから程ほどにしておけば良いのにとため息を漏らす。
晴太と日輪だけでは酔いつぶれたあの男を動かすことはできないだろうから、おそらく居間でだらしなく転がっている筈だ。
客間まで運んでやる義理はないが、気になって居間の前を通りがかれば、酷く乱れた荒い息遣いと獣の唸り声のようなものが聞こえてきて、月詠は足を止めた。

悪い夢に魘されておるのか。

自分にも覚えがある。
昼間どんなに完璧に制御しようとも、眠りの世界までは自己制御できない。
普段閉じ込めている魑魅魍魎たちが箱を開いて心を食い散らかしにかかるのだ。

銀時はそんな己を自分に知られたくはないだろうと思い、立ち去ろうとしたが、どうにもその悲痛な声が気にかかる。

何ができる訳でもないが。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ