銀月短編2

□可愛がる
1ページ/7ページ

『にっこり』と音が聞こえてきそうな、全く、らしくない笑顔を浮かべた銀時を前に、月詠は恥辱に涙目になりながら、小刻みに震えていた。

「はい、どうぞ」と口の前に差し出された匙を敵のように睨みつけながら、何でこんなことになってしまったのだろうかとしばし懊悩する。

「はい、アーン」

悪魔のような甘い声が耳に届いて、暴れ出したくなった。

こやつは誰じゃ?!誰なんじゃ?!

キッと銀時を睨みつけたが、それでも全く意に介す様子もなく、自分の口が開くのを待っている男に胸の内で呪いの言葉を繰り返した。

いつまで待っても口を開かない月詠に銀時がにっこり笑った。
気持ち悪い…と思っていると銀時は月詠のそんな思いもお構いなしに「ああ、熱いのか。ちょっと、待ってろよ」とそう言って、スプーンの粥にふーふーと息を吹きかけて、「ほら」と再び匙を差し出した。

銀時の満面の笑みを睨みつけながら、いっそ、この男を殺してもいいだろうか?と月詠は頭を抱えた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ