銀月短編2

□臙の脂
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「なにをニヤニヤしておる」
シーツに飛び散った破瓜の血を眺めながらニヤニヤと笑う銀時に月詠が息も絶え絶えな様子ながらチロリとこちらを睨んできた。
「いやー、別にそういうの関係ねェて思ってたけど、案外嬉しいモンだなァと思ってよ」
流血が嬉しいなんて思ったなんて初めてだとそう言うと銀時は、先刻まで流していた涙の跡が残る月詠の目尻と頬を指で拭った。
「ぬしもアレか?」
「アレって?」
「男は女の最初の男になりたがり、女は男の最後の女になりたがるってやつか?」
「へえ、誰の言葉?上手いこと言うねえ」
「忘れた」
「じゃあ、オメーは銀さんの最後の女になりてェんだ?」
「たわけ。わっちは最初の男がぬしだったというだけでもう充分じゃ」
可愛いこと言うじゃねえかと銀時は月詠の顔を覗き込み、震える睫毛の上に唇を一つ落とす。
「遠慮すんな。オメーのお初をいただいたんだ。俺のお初はもうやれねェから、代わりに俺の最後くらいはもってけ」
と、そう言えば、たわけ、ともう一度、眠そうな声で返事が返って来た。

……初めて、身体を重ねた夜、寝入るまでの僅かな間にそんな戯言を交わしたことをふと思い出した。
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