銀月短編2

□悪い鬼
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「やめんか」
「誰だ?!何があった?!誰がお前を泣かした?!殺す!ブッ殺す!」
「だから、やめろと言っておる!脳みそが攪拌されるわっ!」
肩に食い込むほど強い力で掴まれ、前後に揺すられつくした月詠が、もう一度、非難の声を上げた。
「なんでもないわ。落ち着け。銀時」
「なんでもないことがあるか?!」
「いや、だからな」
そう言うと月詠は視線を逸らした。
「おい、テメー、眼を逸らすな」
「そうじゃありんせん」
月詠は、畳の上に何かを探すように手を彷徨わせた後、「ああ、あった」と呟いて一冊の薄い本を銀時の眼前に突き出した。
「これじゃ、これ。晴太の国語の教科書なんじゃが、気紛れで読んでみたら、どうにも堪らん話があって」
「はい?」
銀時は眼をしばたいて、目の前に突き出された国語の教科書を見つめて、ドッと肩を落とした。
「……早く言えよ。俺、めっちゃ恥ずかしいじゃねェか…」
「ぬしが言わせなかったんじゃろーが!一人で興奮しおって!」
「あれか?『ごーん、お前だったのか!』だろう?確かにあの話は子ども向けにしては救いがなさ過ぎる。『兄ちゃん、お団子〜、節子ォォォ』といい勝負だ」
「いや、『ごんぎつね』ではありんせん。あれも哀しいお話ではあるが」
月詠はそう言うと膝の上でその教科書を広げてページをめくった。
「これじゃ。『泣いた赤鬼』」
月詠は呟くようにそう言うと「知らねェ」とそう言った銀時に粗筋を語り始めた。
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