銀月短編2

□乳房
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それでも、日輪の心遣いは嬉しかった。
手早く、髪を洗い、身体を清め、湯船に身を沈めた。
ゆっくりと手足を伸ばして、身体の緊張を解す。
深い睡眠と疲労回復のためにと自分に言い聞かせてみるに、子どものころから染み付いた習慣は怖いもので、ものの数分で落ち着かない気分になった。
我慢してリラックスというのもバカらしい。
こんな時、緩みっぱなしのあの腐れ天パならどうしているのだろう?
だらしない顔をますますだらしなく緩めてデタラメな鼻歌でも歌っているのだろうか。
どれ、自分も…と思ってみたが、生憎、デタラメな鼻歌さえも口をついて出てこない。
どの歌を歌おうか?と考え込んでいる時点で既にリラックスとは程遠い気がする。
向いていないのう、とため息を一つ零せば、思いの他、深いため息となって、湯気の中に霧散した。

ここしばらく、銀時たちの姿を見ていない。
おそらく、連日の雨降りで万事屋に籠もりっきりなのだろう。
カビが生えかねないほど、ダラけているに違いない。
あまり見習いたいとは思わないが、「何もしていない」ことに罪悪感を感じないとは驚嘆すべきことだと思う。
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