銀月短編2

□神の庭と地上の庭と
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「ったく、救世主さまを何だと思ってやがる」
散々、方々の店でこき使われた末、ぼやきつつひのやに戻って来ると、既にひのやの虫干しはとっくに終わっていたと見えて、居間で皆が団子を食べつつ談笑していた。
皆でもないか、月詠がいない。
「おふぁえり、ひんちゃん」
神楽が口に団子の串を5,6本くわえたまま謎の言葉を吐いた。
口の周りを団子のたれでベタベタにした神楽と「ああ、神楽ちゃん、服にタレが」とお母さんキャラ全開の新八をチラリと見やった後、銀時は日輪に尋ねた。
「おう、コッチはもう済んだのか?」
「ええ、グラさんと新八っつぁんが手伝ってくれたからね」
答える日輪に「月詠は?」と尋ねようとしたら、先手を取られた。
「月詠なら、奥の座敷にいるよ」
「あっそ」
「虫干しの着物がかかってるからね。落とさないように気をつけてね」
その座敷に自分が行くことが前提になった言葉に「ケッ」と一言返せば、やや憐れみを帯びた目をした日輪に「ほら、銀さんの分よ」と団子の載った皿と茶を渡された。
百戦錬磨の女狐に何を云っても無駄だと、とうの昔に分かってはいたが、半分悔し紛れにもう一度「ケッ」と嘯くと銀時は奥の座敷に足を向けた。
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