銀月短編2

□神の庭と地上の庭と
1ページ/9ページ

朝っぱらから、仕事の依頼を受けた。
――どうせ、暇じゃろう?皆で手伝いに来い。
電話の向こうで月詠が言った。

仕事の依頼は有難い。
けれど、単に「会いたいから来い」と言ってくれた方がもっと有難い。
そんな事をあの女が口に出すわけないか、と思いながら、ひのやを訪れた銀時が見たものは、座敷に次々と運ばれて来る何着もの着物だった。
「何やってんのさ」
「見て分からぬか?」
「分からねえから聞いてるんだろーが」
「虫干しじゃ」
ああ、成るほど。湿気が少なく、晴天が続く今のうちに虫干しをしようというわけか。
「日輪が思い立っての。うちが始めたのを見て、辺り一帯の店も始めおったわ」
「こういうのは伝染するからな」
『ひのやさんが虫干しをしてるよ』『うちも梅雨に入る前にやっておくか』などと言う会話がそこら中で交わされたのだろう。
「と、いうわけで、銀時、ぬしは外の店舗の虫干しを手伝って来なんし。男手が足りん。神楽と新八にはうちを手伝ってもらう」
「おい。なんで。俺だけ?」
「アホか。ぬしは!」
蔑んだようにそう言うと、月詠は神楽と新八の方にチラリと視線をやって、憚るように小声を出した。
「イメクラやらの衣装じゃ。未成年にはさせられん」
「ああ」
確かに万年童貞の新八なんかじゃ、何の役にも立たないかもしれない。
「ナース服やミニスカポリスやら、ぬし向けじゃわ」
「あのなあ。俺は中身のねェ殻には興味ねェよ」
ブルセラ趣味は断じてない。
コスプレは中身あってのものだろうと銀時は憮然とした。
「興味がないなら尚更上々。さっさと行って来なんし」
アッサリそう言われて、銀時は月詠にひのやを追い出された。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ