銀月短編2

□傲慢【後編】
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日輪は、ほうと嘆息を漏らすと、時計に目をやった。
もう、そろそろ帰ってくる頃合だろう。
それにしても、天然の勘違いとは言え、大した爆弾発言をしたものだ。
日輪は漏れる笑いを抑え切れないでいた。
その時のあの男の顔を是非とも見たかったものだと思う。
さぞかし狼狽えたことだろう。
「まあ、これも、いいキッカケじゃないかしら?」
波風の一つも起こさないと、いつまでたっても、変わらない、変わりそうにない二人だから。
大きな波に、ざぶんと飲まれて、二人一緒に攫われていってしまえばいいんだわ。
銀さん、そういや、カナヅチだったっけねえ?
じゃあ、溺れてしまうのは銀さんの方かしら。
日輪は自分の想像にクスクスと笑いを漏らしながら店奥に姿を消した。


今日も何事も起こらなかった。
大きな事件もなく、怪しい人物の姿もない。
あくまで今の時間まではの限定付きであるが。
安堵のため息とともにこのまま何事も起こらないことを祈りながら、ひのやに帰ってきた月詠は、自分の大きな間違いを知った。
ひのやで面倒ごとが待っていようとは。
まさに、灯台元暗し。
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