銀月短編2

□傲慢【後編】
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日輪は去って行くサングラスの男に丁寧に頭を下げた。
手を挙げて答えるマダオの指の間には、日輪が渡したキャバクラのサービス券が挟まれている。
人ごみの中、漏れ出る笑いを隠し切れずに消えていく男を見送った後、日輪は、ハアとため息を漏らし、こめかみを揉んだ。
全く、ウチの娘ときたら、困った子だよ。
銀時の友人で長谷川と名乗った男の話を思い出して、日輪は苦笑した。
長谷川の持ち込んだ話は、日輪にとって初耳の話だった。
もちろん、妹とも娘とも思っている月詠に「そんな事」があれば、気付かないような自分ではない。
はっきりと否定することができる。
何故そんな事をと戸惑う日輪に長谷川が聞かせた推測は、あまりにもあの娘らしくて、笑ってしまうようなものだった。
だが、それも仕様がないか。
この吉原じゃ「おぼこ」なんて最も縁遠い言葉だものねえ。
男と女の仲に他人が嘴を突っ込んだところで、なるようにしかならないのが定石だから、いつもは、多少、もどかしい思いを抱きつつも、放っておく日輪だったが、この件に関しては、他人が嘴を突っ込まないことには納まりがつきそうにない。
なんてったって、月詠が気付いていないからねえ…。
つくづく、長谷川が御注進に及んでくれたことが有難かった。
でなければ、自分も気が付かなかっただろう。
銀さんに親身になってくれるいい友だちが居てくれて良かったよ。
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