銀月短編2

□傲慢【前編】
1ページ/11ページ

どうして、そんな話の流れになったのか、どんな経緯だったかも最早、覚えていない。
それほど、月詠の発した一言は、銀時にとって衝撃的なものだった。
「いつまでも、んな訳あるか!たわけ!」
耳を疑うというのはこの事だろうと銀時は思った。

えーっと。確か。
――おぼこ女が何を偉そうな、とかなんとか俺言ったんだっけ?
んで。月詠が『んな訳あるか』って…。
『いつまでも、んな訳あるか』って。
「ハァ?」
いやいやいや、まさか、そんなことないよね?
単なるハッタリだよね?
死神太夫ともあろう者が、普通の女みてェに色恋にうつつを抜かしたりしないよね?

頭の中で駆け巡った言葉は咽喉の奥で引っ掛かって言葉にならず、銀時はポカンと月詠を見返した。
「以前はそうだったかもしれんが、天が開いてどれだけたったと思っておるんじゃ。いつまでも以前と同じ訳がないじゃろ」
銀時の内心の狼狽をよそに、月詠はいたって冷静だった。
ええええー?!
もしかしてコイツ、本気で言ってる?
これは『ハッタリ』などではないと直感がそう告げる。
「地上にも慣れてきたし、知り人も増えんした」
自分の耳が変になったのか、月詠の声がひどく遠くに聞こえる。
耳に水でも入ってしまったのだろうか。
現実味はとことん薄く、自分は何か悪い夢でも見ているのではないかと思った。
「まあ、ぬしのお陰と言えば、ぬしのお陰じゃろうの。改めて礼を言う」
月詠は、どこか楽しげにそう言った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ