銀月短編2

□俺らの…
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顔も見せずにひらひらと手を振りながら月詠は立ち尽くす銀時に言葉を投げかけた。
「ゆっくり遊んでいきなんし。なんなら、料金はわっちのツケにしておいてもよいぞ」
頭が混乱していて、『んなこと出来るわけねェだろ』と言い返すことも出来なかった。
ただ、分かったのは。
月詠に手を放されたのだということだけだった。


月詠の言うように遊ぶ気になどなれなかった。
ましてや、月詠のツケにして遊ぶ気になどなれるわけがない。
逃げるように吉原を後にしてから、銀時は、安酒をあおって泥酔の挙句に、昼近くになって、万事屋のソファーで目を覚ました。
どうやって帰ってきたかも定かではない。
目を覚ました途端、昨夜のことを思い出して、胸に重いものが落ちた。
帰ってきた記憶もないのなら、その前の記憶もついでに持っていって欲しかった。
別に傷つけるつもりなどなかった、と思う。
ただ、不安になっただけだ。
あの夜に確かに繋がった自分と月詠を繋ぐ糸のようなものは、時が経つごとに長く、見えにくくなっていく。
本当にこの糸の先は、まだあの女と繋がっているのかと不安になるほど、その手ごたえはない。
時々、無性に不安になる。
だから、その糸の先にあるものを確かめたくて、つい強く引っ張ってしまう。
強く引けば引くほどに、勢い余って、その先の女を無様に転ばせてしまうというのに。
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