銀月短編2

□俺らの…
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「あー、オメー、もしかして妬いてる?俺がモテモテだからって、妬いてるわけェ?」
吉原の往来で、銀時の袖を引こうと、群がる遊女たちに不機嫌そうな顔を見せた月詠についつい言ってしまった。
……またやってしまった。
銀時は目の前の女の歪んだ顔を見て、先刻の自分の発言を取り消したい気持ちになった。
いや、いっそ消え去りたい。
近頃、こんな事が増えたような気がする。
月詠は、一瞬だけ顔を歪ませた後、それからいつもの無表情に戻った。
咥えていた煙管を唇から放し、ふぅーと宙に向けて大きく煙を吐き出した。
吐き出した煙が空中に溶けて消えていく。
まずい、と何故だか思った。
「妬けるのう」
月詠は無表情を崩すことなくそう言った。
「はい?」
銀時は己の耳を疑った。
瞬間、ギクリと自分の顔と身体が強張るのを銀時は感じた。
「と、言ったら、どうするんじゃ?」
月詠はそう言うと、自分を真っ直ぐに見据えた。
目に皮肉の色が浮かんでいる。
「そう言ったら、困るのはぬしの方であろう?あまり自分の首を絞めるようなことは言わないことじゃ」
月詠はそう吐き捨てるかのように言うと何も答えられずにいた銀時をその場に残して、スタスタと歩き出した。
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