銀月短編2

□閻王と牡丹
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「あれ、どうしたの?」
銀時は、答えを半ば予想しつつも、月詠の部屋に飾られた牡丹の花を指差した。
薄紅の豪奢な花はさすがに「百花の王」と称えられるだけのことはある。
「もらいんした」
「誰に?」
「ひのやの客がくれんした」
あっさりと言う月詠に銀時は眉を顰めた。
いつものことだ。
大方、「百華の頭」である月詠にちなんで、この女に岡惚れしている男が押しつけてきたのだろうと思った。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、という言葉もあるくらいだから、その容姿への多大なる賛美も見て取れる。
「おそらく、目当ての遊女に受け取ってもらえんかったとかじゃろうな」
月詠には今ひとつピンと来ていないらしいが。
「捨てろよ」
「何でじゃ?どうせ、牡丹は花もちが悪いから、直に枯れる。盛りは楽しんでやらんとな」
月詠は、そう言うと、牡丹の花に顔を寄せた。
艶やかな花の色を頬に映して、月詠は薄っすらと笑った。
ひどく艶かしい姿だ。
余所の男から贈られた花だと聞かなきゃ良かった。
聞いてしまった後では胸糞が悪いだけだ。
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