銀月短編2

□銀幕の月
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20代も後半となると、徹夜は身体に堪える。
時計は朝の6時を少し回ったところだった。
朝の日差しが目に沁みて、銀時は手をかざして日差しを遮った。
昨日の夜から今の今まで、夜を徹しての中国語のお勉強という名の麻雀大会は、いつも通り誰が勝って誰が負けたのか分からないほど、グダグダのままなし崩し的に終わった。
もっとも、勝ち逃げしようとする面子をグダグダ地獄に引っ張りこんで、勝敗すら判別不能の局地まで追い込んだのは自分であるが。
ふああと大きな欠伸を一つ漏らして銀時は、ぶらぶらと自宅兼事務所のある古いビルへの道を辿った。
今日は何の仕事も入ってないし、昼まで寝るとするか。
新宿という場所柄、仕事はもっぱら夜であることが多い。
「探偵事務所」なんて名ばかりで実情は「なんでも屋」としての方がこの街では通りがいい。
客同士の喧嘩の仲裁から、地回りの893さんたちとのトラブル処理、家出人探し、ペット探し、胡散臭いのからややまっとうな仕事まで何でもアリだ。
朝の街は夜の顔がまるで嘘であるかのような静けさを見せていて、それもまた、銀時は嫌いではない。
近道代わりに申し訳程度の公園を突っ切ろうとして、銀時はその女に気付いた。
どういう訳かその女は、自動販売機の紙幣投入口にお札を入れようと躍起になっていた。
えらく別嬪の女である。
この街で上玉を見かければ、まず100パーセント、それは何処かの店のナンバー1か、もしくは土木工事なみの大工事が施された整形美女で。
だが、その女はそのどちらにも属さない空気があった。
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