銀月短編2

□どんな恋でも恋は恋
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「また、アンタか」
玄関を開けるなり、彼は面倒臭そうにそう言った。
今日のお召し物は濃紺の着流しに浅葱の帯。
いつ見ても惚れ惚れとする男ぶりだ。
「はい。また私です!お時間があれば、ぜひともお話を!!」
「お時間なんて、年寄りには腐るほどあらァ。もっとも先の時間はそうねェが」
彼はどうでも良さそうな顔をして、縁起の悪い事をいつもの伝法な口調で唇に載せた
幕末研究家兼自称「坂田銀時」研究家の私が、この超いなせでシブい殿方と運命的な出会いをしてから早、半年。
何度もお邪魔しているうちに、すっかり2次元の坂田銀時よりもその息子の彼に夢中になってしまった。
漂う色気とか、気風のよさとか、鮮やかな雰囲気とそれとは相反するような余韻のある渋みとか、その辺の若い男には望むべくもないものを彼は持っていて、それに私はすっかりやられてしまった。
もっとも、彼は全く気付いていない。
2次元の坂田銀時に入れあげている妙な女くらいにしか思われてはいないようだ。
だからこそ、家に上げてくれるし、砕けた調子で話に付き合ってくれる。
「ほとほと、親父はストーカーに縁があるみたいだぜ」
彼は失礼なことを言いながらため息をついた。
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