銀月短編2

□塗り替えられる闇
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そもそもはいつもの口喧嘩の結果だった。
数日前に、吉原は春の嵐の影響で突如として停電となった。
停電は小一時間くらい続き、百華も対応に追われることになった。
せいぜいが天からの星明りと月明かりだけでは、真っ暗もいいところで、非常用の懐中電灯などもあるにはあったが、手元足元不如意で、なかなか苦労した。
そんな話を翌日に吉原にやってきた銀時に話したのだ。
男は小馬鹿にしたような顔をして「オメーら、街の子だもんなァ」と薄ら笑った。
ムッとしていると「そんなモン、真っ暗闇のうちに入るかよ」と言って、銀時は、「新月の夜の山ン中に比べりゃ、真昼間みたいなモンだぜ」と続けた。
おまけに!おまけにだ!
「ありゃ、オメーには無理だな。足がすくんで動けなくなるんじゃねーの?」
他人を完全に馬鹿にした発言に挑発だと分かっていても、カッとなった。
ここで、カッとしたのが悪かった。
どうも自分はこの男が相手となると冷静さを失いがちになる。
うっかり言ってしまったのだ。

「では試せばよかろう!頃合も良く、三日後には新月じゃ!山中の闇だろうと、地獄の闇だろうと、連れて行きなんし!良い修行じゃ!」
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