銀月短編2

□塗り替えられる闇
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月詠は、倒木らしきものに躓いて派手に転んだ。
もう、こうして転ぶのは何度目か数えるのも月詠は放棄していた。
骨には異常はないが、そこら中、打ち身や擦り傷だらけとなっている。
どうして、こんなことになってしまったのか?
起き上がる気力も失せて、月詠はその場にパッタリと倒れ臥した。
新月の闇は深く、江戸市中から離れた鎮守の森の中では、生い茂った木立に阻まれて、星影さえも届かない。
自分を飲み込んでしまいそうな闇に怯えの気持ちが生まれた。
いかに自分が視力に頼りきっていたかが、身に沁みた。

あんなこと、言うのではなかった。
今さら、後悔しても遅いのは分かってはいたが、できる事ならつい数日前の自分を諌めに過去に戻りたいと思った。
こんなことになったのは、あの腐れ天パの所為。
いや。
月詠は苦い顔をした。
他人の所為にしてはいけない。
これは自分が巻き起こした事態なのだ。
あの天パだって一応は「やめとけ」と止めたではないか。
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