銀月短編2

□或る朝
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午前中に万事屋を用事で訪れた月詠に洗濯物を干すのを手伝わせたのは、大した理由があってのことではなかった。
新八が、お妙に移された風邪で寝込んでいて休んでいたのと、神楽も遊びに出ていなかったという至って現実的な理由。
溜め込んでいた洗濯物は結構な量で、一人で干すのが面倒になって、きっと文句を言うに違いないと思いつつも「手伝え」と言えば、意外にも月詠はあっさりと了承した。
「どれだけ溜め込んどるんじゃ」
洗濯籠二つに山盛りの洗濯物を見て、月詠が呆れた顔をした。
「うっせー、俺も忙しいんだよ」
「ほう、どの辺がどう忙しいんじゃ?仕事もしておらんくせに」
憎まれ口を叩きつつも、幾分か、その口元が緩んでいる。
「オメーはなんでそう一言多いのかねー?」
黙っていれば、文句なしのいい女なのに、惜しい。
だが、黙っていればそれはそれで、心配になるのだから、面倒なことだ。
ギャーギャーと憎まれ口を叩き合いながらも、二人は至って順調に洗濯物を干し続けた。
山盛りの洗濯物も二人で干せば、あっという間に片付いた。
目の前で干されたタオルやら、シャツやら、自分の着流しがゆらゆらと乾いた風に揺れているのを銀時は満足げに眺めた。
今日は一日天気がいいみたいだし、朝から干せば、夕方になる前には何とか乾くだろう。
残るは大物のシーツだけだ。
銀時は洗濯籠からシーツを取り出した
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