銀月短編2

□恋風
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「では、銀時たちと鈴蘭と舞蔵殿の墓参りに?」
「ええ、でもはぐれてしまって」
「何をやっとるんじゃ、あの天パ」
「いえ、私が余所見をしていたのが悪いのです。城下は珍しいもので一杯ですから、つい目を奪われてしまって」
そよが苦笑しつつ漏らした言葉に月詠は、頷いた。
「分かります。わっちもそうでした」
「ツッキーさんも?」
「はい。解放されるまで吉原は地上とは隔絶された場所でありんしたから。時ごとに、季節ごとに移る空の色も花の色も、人の営みも珍しくてしょっちゅう目を奪われておりました」
ぱちりと目を見開いたそよがひどく嬉しげな笑顔を月詠に向けた。
「空の色、ですか」
そよは眩しそうな顔をすると空を仰ぎ見た。
しゃらん、と髪に挿した簪が繊細な音を立てるのが月詠の耳に届く。
きっと、同じ地上であっても、城からみる空と、ここから見る空とでは、色も空気もこの少女には、違って見えているのかもしれない。
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