銀月短編2

□雪ぎ水
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気が付けば、腐肉と化した屍の中にいた。
悪い夢を見ていると思った。
右を見ても左を見ても見えるのは累々と重なった屍。
空は灰色に淀み、餌にありつきに集まったカラスの群れが、その空に黒い染みを落とす。
身体は釘で打ち付けられたかのように動かなかった。
夢を夢だと自覚しても覚めないなら。
これは、夢じゃないのかもしれない。
とうとう、俺も屍の一つになったか。

そんなことを思った。

びちゃ。
汚らしい音がした。
カラスがついばんだ腐肉が俺の顔のすぐ近くに落ちて来た。
汁が散って、少しだけ顔にかかった。
拭い去る気も起きやしない。
そのうち。
俺もこうなる。
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