銀月短編

□群雲
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「ソッチはどうだ?近頃、おもしろいネタはないのか?」
「面白いかどうかは知らぬが、何やら臭そうな連中が出入りしておるわ」
「へえ?」
土方の目がキラリと光った。
鬼の副長の顔になった土方に月詠はますます頬を緩めた。
「見張りは?」
「付けている。抜かりはありんせん」
「どう臭い?」
「来ても尻が落ち着く間もなくすぐに帰る客らがいる。それが週に二,三度。何をしに来たのかサッパリ分からぬ。今のところは何もないが、用心に越したことはなかろう」
「天下の色街に来て、それはねェはな…」
土方は顎に手をやって考え込んだ。
「わっちらが見張れるのは吉原までじゃ。地上に帰ったあとのことは」
「分かった。コッチで受け持つ」
土方が月詠に皆まで言わせずに後を引き取ってきっぱり言った。
気楽だ、と月詠は思った。
自分にも地上に銀時を介在させずとも話ができる男がいる。
随分と殺伐とした話ばかりだが。
「そういや、吉原ってのは監視カメラの一台もないのか?」
「ああ、もともと吉原は幕閣のお偉方や天人が顧客じゃったろう?その関係でな」
「なるほどね。色々と差し障りがあるというわけだ」
土方がニヤリとした。
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