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□標的9
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『あーあ、今日は1人で見回りかぁ』
退屈そうに呟く与魅。
普段は雲雀と2人で巡回しているのだが、外せない用があるとかで1人で行っていた。
『どうせ群の匂いでも嗅ぎつけたんだろうなぁ。なんか面白いこと起こらないかな・・・・あ』
ブツブツと独り言を言う与魅の瞳に、見知った人物2人が映る。
瞬間、ニィっと口許が歪んだ。
『(最高の暇潰し発見!)』
そろりと2人の背後に回り込み声をかける。
『ツナ、獄寺君。こんな所で何をやっているんですか?』
「与魅!そっちこそ・・・って、制服って事は見回り?」
『はい。それより獄寺君真っ青ですよ?』
木にもたれ掛かる獄寺の顔は青白く、息も荒かった。
「アネキとは8歳まで一緒に住んでいました」
『(アネキ・・・ってことはビアンキか)』
獄寺の回想が始まる。
要約すると、パーティーでピアノを演奏する際にビアンキのクッキーを食べる。
激しい目眩と吐き気に襲われ演奏は滅茶苦茶。
しかしそれが高く評価されてしまい、気を良くした父は事ある毎にクッキーを作らせた。
「その恐怖が体に染み着いて、今ではアネキの顔を見るだけで腹痛が・・・」
「薄々感づいてたけど、強烈なお姉さんだね」
「ええ、大嫌いです」
『獄寺君のお姉さんですか。一度会ってみたいですね』
「いや、やめた方が良いと思うよ!?」
前回のおにぎり事件の時は見かけなかったため、是非ともと思っていたがツナに全力で止められる。
「俺はアネキに近づけません。10代目・・・アネキをこの町から追い出してもらえないでしょうか」
「ええ!?そりゃあビアンキがいない方が嬉しいけど・・・ 」
「作戦があります!」
『(ランボさんには悪いけど、今回は見守っておこうかな)』
あらかた作戦を聞いて、沢田家に向かう。
『ツナの家に行くの初めてですね』
「そういえばそうだね。見回り中だけど雲雀さんは大丈夫なの?」
『黙ってれば大丈夫ですよ。何かあっても、ハンバーグ作っておけば大抵は許されます』
「(なんだそれー!?)そ、そういえば噂で聞いたんだけど・・・。雲雀さんと付き合ってるって・・・・」
『な!?噂って・・・えぇ!?』
突然の質問に真っ赤になる与魅。
それを見て驚くツナ。
「(こんな表情もするんだ・・・)」
『噂って、どれくらいの規模なんですか・・・』
「え?あ、たぶんほぼ学校全体じゃないかな?」
『なななん!?なんん〜!?』
「日本語になってないよ!?」
ふらっと目眩がして倒れそうになる。
何とか堪えても、恥ずかしさ故に顔が上げられない。
『アリエナイナンデソンナニシレワタッテルノ?ウワサコワイ』
「ちょっ・・・与魅!?だ、大丈夫だって!学校全体って言っても一部だろうし!」
『・・・そ、そうですよね!私のことなんか興味ある人居ないですよね!』
「(そこまでは言ってないんだけど!?)」
そう思ったが、先程よりは持ち直した様子だったため踏みとどまる。
そうこうしているうちに沢田家に到着した。