return

□標的5
1ページ/5ページ






『おぉ、皆頑張ってるなぁ』

「与魅はサボりすぎだと思うよ」



グラウンドで行われている授業を応接室から眺める与魅。




『だって女子は男子の試合見てキャーキャー言ってるだけだもん。皆で楽しくっての好きじゃないし』

「それには同感だね」






この間の一件から数日が過ぎた。
大きな変化はないが、雲雀さんに対して敬語を使わなくなった。
というか、使うと雲雀さんの機嫌が悪くなる。




『(少しは親しくなれたってことかな?)』






『あ、ツナたち負けた』





チームメイトに罵声を浴びせられ、トンボがけを押しつけられているツナ。



『しゃーない。手伝ってやるか』

「どこ行くの」




気付くと真後ろに雲雀が居て、何故か抱きしめられていた。



『ひ、雲雀さん!何を・・・』

「質問に答えて」

『トンボがけを手伝いに行こうかと・・・』





変わったことまだあった。
あの日以来、雲雀さんからのスキンシップが多くなっていたのだ。




『(絶対に反応見て楽しんでる)』





分かってはいるが顔に集まる熱は冷めない。



「ふうん。まあいいよ」




意外にもすんなり解放され、与魅は逃げるように応接室を出た。








『心臓が保たないよ!』




頬を覆いながらグラウンドに向かいツナを見つける。




『ボス。手伝いに来ましたよ』

「与魅!」

「助っ人とーじょー」

「山本!?」




ツナに声をかけると、山本もやってきた。




『山本君も手伝いですか?』

「おう!」

『今日はすごかったですね(主に女子に騒がれて)』

「授業出てなかったのに見てたのか?まあ、バカの一つ覚えみたいに野球しかやってねーからな」

『(あ、これって・・・)』

「何言ってんだよ!山本はその野球がすごいじゃないか!」

「それがどーもうまくなくってさ」





山本は最近伸び悩んでいることを話した。





「俺どうしたらいいかな?」

「え、あ、やっぱり・・・努力・・・しかないんじゃ・・ないか・・・な?」

『(挙動不審過ぎるでしょ)』




目を泳がせながら答えるツナに、思わず心の中で突っ込む。




「だよな。俺もそうじゃねーかなーって思ってたんだ!」




気が合うなと笑い会う2人。



『山本君・・・』

「どうしたんだ夜咲?そんな深刻そうな顔して」

『・・・無理はしないで下さい。怪我をしたら元も子もありません』




自分に言えるのはこのくらいしかない。
この後山本が怪我をすると分かっているのにも関わらず。


練習するなって言うのは簡単だが、伸び悩んでいる山本に言っても意味を成さないから。



『(悔しい・・・)』




「心配してくれてサンキューな」

『とんでもないです』


苦笑いを浮かべるしかない。










   
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ