君と見るキセキ

□第5Q
1ページ/3ページ





「クックッ、確かにありゃギャフンっスわ。監督のあんな顔初めて見たし」

「忍の作戦が上手くいったんだよ」

「あれって作戦だったんスか!?」

「はい、全て忍が計算して仕組んだことです」

「か、確信犯スか・・・。やっぱり忍っちはすごいっす!」




全面コートを使うことになったため荷物を移動させていると、黄瀬が笑いながら話しかけてくる。




『笑ってんじゃん。もっと驚くとかないの?』

「いや、十分驚いたっス」

『なんか物足りない!』



ぷーと頬を膨らませると、黄瀬は顔を赤らめさせながらウズウズとしている。
なしたのさと首を傾げて尋ねると



「もう我慢出来ないっス!」

『のわ!?』



ガバッと突然抱きついてきた。



『なんなの!?』

「可愛すぎなんスよ!なんスか今の!小首傾げるの反則!」

「反則なのは黄瀬君です」



ベリッと黄瀬をはがしながら黒子が言う。
いつもと変わらない表情にも関わらず、どす黒いオーラが出ていた。



『テツヤ・・・なんか怒ってる?』

「怒ってはいません。ただ、黄瀬君に殺意が芽生えただけです」

「黒い!黒いっスよ黒子っち!」

「黄瀬君、五月蠅いです」



ギャーギャー騒ぐ黄瀬に黒子が一喝すると、武内が黄瀬を呼んだ。
少しすると、試合が再開する。



「やっと出やがったな・・・」

「スイッチ入るとモデルとは思えねー迫力だなオイ」

「・・・伊達じゃないですよ。中身も」





『んー、なんか話してるけど順平先輩顔引きつってんな。って、リコ先輩までなんちゅう顔してんですか!』

「いや、ユニフォーム越しだから確かな数値ではないけど・・・
化け物だわ、黄瀬涼太」

『そんな今更「キャアア!黄瀬クーン!」・・・うっせぇ!何なんだよマジで!』



黄瀬がコートに出ると、ギャラリーが騒ぎ出した。
黄瀬は律儀に手を振っている。



『やっぱり外面の涼太は嫌いだな』

「テメーいつまでも手とか振ってんじゃねーよ!」

「いてっ!スイマッセーンっっ!」



海常高校のキャプテン笠松が、容赦ない跳び蹴りを黄瀬に入れる。




『うっわー痛そう。って、あの人笠松幸男さん!?うわー!私あの人のバスケ好きなんだよなぁ!』

「知ってるの?」

『知ってるって言うか、わやアツい人ですよ!バスケ好きってのが伝わってきます!さっきは苛立っていたので気付きませんでした』

「わ、わや?」

『あぁ、北海道弁で“すごく”って意味です。普段は標準語意識してるんですけどね』



いつになくイキイキと話す忍に、リコは少しだけたじろいでいた。
それを見るもう1つの影。



「どうしたんだよ黒子?」

「・・・いえ、なんでもありません」





互いが互いの気持ちに気付かないまま、試合が再び始まる。




  
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ