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□標的10
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学校に着き、校内をぐるっと一周してから応接室に向かう。



『今日は本当に多いね』




目線の先には30cm以上に積まれた書類が5列。
雲雀さんは眉間に皺を寄せ、片肘をつきながらも早々に作業に取りかかる。




『(書類片付けてる雲雀さんもふつくしい・・・)』




だらしない微笑みを浮かべていると、雲雀と目が合う。





「変な顔してないで早くやって」

『はーい』




1度スイッチが入れば早く、驚異的な集中力を発揮する。
20分程経つと、沢山あった書類はかなり減っていた。



『雲雀さん。お茶入れますか?』

「コーヒーにして」

『了解』



作業をキリの良いところで中断し、コーヒーを煎れる為席を立つ。






『はい。ブラックで良いよね』

「ああ・・・与魅、ちょっとおいで」

『なんだい?』




近づいた瞬間に腕を捕まれ、膝の上に座る形になる。




『・・・またですか』

「冷静に言ってるつもりかもしれないけど、顔真っ赤だよ」

『う、うるさい!てか書類片付けようよ!』

「こっちの方がやりやすいんだよ」

『私はやりずらいよ』

「与魅がやりずらかろうが関係ない」

『出ましたねワガママ王子。いや、王子ってキャラではないか』

「・・・ならなんだっていうの」

『んー・・・番長、帝王、大魔神』

「ワオ、そんなことを言う奴にはお仕置きが必要だね」

『ちょっと!・・・・いや・・・。







アヒャヒャヒャヒャヒャ!ギブギブ!わき腹ダメ〜!』

「僕が許す訳ないでしょ」




後ろから抱きしめられた状態でわき腹を擽られているため、逃げるに逃げられない。
反撃しようにも力が入らない。
与魅は必死に頭をフル回転させる。



『ひ、雲雀さん・・・・』

「・・・・・」



最終手段の上目遣い。
しかも笑いすぎて自然と涙目。
果たして雲雀さんに効くのだろうか・・・。




「与魅・・・・」

『!?』




雲雀の手は止まった。
が、今度は顔が接近してくる。





「あの、お取り込み中すいません。恭さんよろしいでしょうか?」

「『・・・・・・・』」




気まずそうに入り口に立つのは草壁。
不機嫌な顔になったのは雲雀。
助かったと顔が綻ぶ与魅。





「その・・・一応ノックはしたのですが・・・・・」

「邪魔だよ。用件は後にして。じゃないと咬み殺す」
『草壁さん助けてください!じゃないと委員長自ら風紀を乱します!』

「・・・・・・・・




あー、用件だけお伝えします。本日早朝巡回時にカツアゲ2件、酔っ払い3名、万引き1件。それぞれ対応は済んでおり、他異常なし。それでは失礼します」




早口に報告を済ませると、そのまま応接室から出る。





『(あ、間取りやがった・・・)』




助けもしないが、用件も後に回さない。
綺麗に間を取った草壁に呆然とする与魅。
邪魔者が居なくなったと、再び雲雀の顔が近づく。



『雲雀さん!ここ学校だから!』

「関係ない」

『自分で風紀を乱すの?』

「僕が風紀だ」

『なにその“俺が神だ”ばりの某死神ノート発言』

「なに言っているのか分からないんだけど?」




ああ、そうか。
漫画の中の世界に、前の世界の漫画がある訳ないか。
あっても雲雀さんは読まなさそうだけど。
いっつも群れを咬み殺してるか、書類片付けてるか・・・・





『ああ!書類!早く終わらせないと!』




すっかり忘れていた。
終わらなかったら、何のために早く来たか分からない。
しかし、雲雀は抱き締めたまま離そうとしない。




『雲雀さん?』

「・・・・・」





   チュッ




「今はこれで我慢しておく。書類片付けるよ」




頬に触れる程度のキスをすると、腕を離し与魅の身体を解放する。




『〜〜〜〜〜!馬鹿!』

「早くやらないと咬み殺すよ」

『はいはい』

「“はい”は1回」

『はい!』





  
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