世界の果て

□テミスと
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―――あら?

いらっしゃい。


今日は何の話を聞きたいの?

……そう、真美の話ね。


あのコは私がこちらへ呼んだの。

え?知っているって?

でもその時生じた定めなんて…知らないでしょう?


ふふっ、だって誰にも話していないもの。

あのコは擬似的にプロメテウスの神格が授けられた。

あ、あくまで擬似的よ。

だって彼女は正真正銘人間だもの。

ただしエイトセンシズに目覚める可能性のある、ね。

こちらに呼び出す時に何かしら立場というものを与えなくてはいけなかったの。

こちらに留めておく為にね。

大義名分というやつが必要だったのよ。


うん、何故プロメテウスか?

当然の疑問かもね。

私にも出来る範囲というものがあるのよ。

私が産み出せるのは私から産まれ出たものだけ。


そう、プロメテウスは私の子供。

彼女に授けるにはちょうど良かったでしょう?

プロメテウスには『先見』と『熟考』の意がある。

どう?彼女にぴったり!

それにね、プロメテウスの火は希望なの。

彼女がもたらすものはこの世界の人間にとって希望になるのよ。


……その後?

プロメテウスはゼウスに散々苦しめられたわ。

ま、後は知っての通り。

でも彼女の未来は決まっていないわ。

だって彼女の手で神話は神の手を離れて人の時代に移る。

その先なんて私も知らないわ。

ね、わくわくしない?

やっと私達は選べるの。

神として、一個人として。


その時はアナタも好きに選ぶと良いわ。

きっとその時は私もアナタも、自由なのだから。




擬似的にだけど授けられた神格は彼女の能力を増長させる。

世界がご都合主義なのも、私の娘達の力がほんの少しだけ働いているから。

置き換えの力はここにも働いている。



私はかつてクロノスに言ったわ。

人は何者でもない代わりに何者にもなれると。

彼女はここでは何者でもなかったが故に誰にでもなった。

世界に対してのプロメテウス。

カイロスに対してのクロノス。

そして……ハーデスに対してのゼウス。

彼女がゼウスの置き換えとして機能するならば世界は新たな神話を創造する。

そう、神がいなくなった後の、神憑かった、神すら知らない物語。

それは人による創世神話。






 

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