世界の果て

□彼が言うには
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〜シオン〜





「――――ではこの角の飾りは?」

「うーん、アラベスクとかでも良いけど、日本の様式はどうかな?」



そう言って真美はテーブル代わりの石柱の上に置かれた紙に模様を書き込む。

2、3デザインを書き上げると顔を上げて私を見た。



「これが城によく使われるデザイン。
こっちは寺…って言っても分かんないかな?
聖堂とか寺院に使われるね。」

「私も元はチベット仏教だ。
確かに神仏関係の物の様式は興味深い。」

「それぞれの文化が顕著に表れるから見ていて楽しいし。
シオンはどんなのが好き?」



真美がニカッと笑って問い掛ける。

普段は殆んどそんな表情を見せないのに、興味のある分野の話となると子供のようだ。



「私は……そうだな、曲線が綺麗なデザインが好きだな。
緩やかなカーブと温かみのあるライン。
道具というものは人間が使う事を前提として作られるべきだと思う。」

「人間機械学だね。
シオンは前衛的な考え方をするようだ。」

「…当たり前の事ではないのか?」

「Non.
それを当たり前だと捉える事自体が難しい。
誰にでも使いやすい、これが新たな発想と工夫に繋がる。
当たり前を当然に出来るとは素晴らしい事だぞ。」



私の顔を見詰めて頭を撫でる。

真美の指は気持ち良い。

子供扱いをするなと言いたいところだが、ついついその感触に浸っていたくもなる。


普段からこういったふうならばもっと誤解されることもないだろうに。

興味のない事にはローリアクション、仏頂面。

場の雰囲気を察することは上手いらしいので誰かと衝突する事はないが…

如何せん悪くは思われていないが、良くも思われていないようだ。




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