世界の果て

□ジャミール日記
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チベットは遊牧民族が多いのかと思っていた。

それもチベット高原での遊牧を想像する。

しかしジャミールはその例に沿わず、山脈の中にあった。

住居は日本で言う棚田のように山の斜面を拓き、段々と連なって建てられる。

一婦多夫の文化が一部の地域に根強く残っている。

これは宗教によるものなのだとムウが教えてくれた。

宗教と言えば、この地域は渡り鳥の姿が多く見られ、鳥葬が有名だ。


ジャミールに来るまでに幾人かチベットの人々とも接触する機会があったが、彼らは男女問わず装飾品をたくさん身に付けていた。

これも文化に根付いたものらしく、遊牧民族は貴重品をアクセサリーに換え、身に付けて移動したそうだ。

だからそういった装飾品が発達したからこそ、ムウのように手先が器用な者もたくさんいるらしい。







「ムウの服って地味だよね。」

「何ですか…藪から棒に。」

「いやね、ここに来るまでにいろんな人に会ったんだが、文化のせいなのか皆カラフルな着合わせで装飾品も多い。
ムウはそういうの着ないのかと思って。」

「持っているには持っていますが、作業するには邪魔になってしまうではないですか。
普段は着ませんね。」

「へぇ、いつか着る機会があれば見せてよ。」

「機会がありましたらね。
それにしてもそんなの見て楽しいのですか?」

「楽しいから頼んでいる。」

「真美、やはり貴女変わってますよ。」

「そう?
面白いと思うけどなぁ…
私は日本人なんだけど、チベットの人とは遺伝子的にさほど違わないんだよ。
なのに文化が違い、独自の生活を営んでいる。
それだけで興味深い。」

「……貴女、根っからの研究者ですね。
私には分かりませんが。」

「良いんじゃないか?分からなくても。
人間、興味ある物や事が一致する方が珍しい。」

「ま、そうですよね。」




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