08/24の日記
04:45
ぶしさに
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ここでも何度か触れたじじいの初盆関連で嫌な親戚に会わなければならない精神的苦痛とか物理的にばたばたしてたのとかで長期間書いてなかったのでリハビリがてら唐突なぶしさにです。
ツイッターで絵とか小ネタとかは出してたけど文章にするのは初めてかもしれない。…初めてだね?
コメントレス!
>総さん
あまりに不定期過ぎて更新ペースが早いと気付かれない、それがこの無駄話という場所!(笑)
わーモブの話喜んでもらえたようで良かったです!モブネタ色々考えてるのでまた出しますー!
天使とか知りませんけどみたいな顔する梗子さん可愛いでしょ。可愛いなあと思いながら書いてましたからね(笑)
バレたらどうなるんでしょうねぇ……
*****
ごめんなさい、ごめんなさいと泣きじゃくる私を、彼は強く抱き締めてくれた。
私のせいで大怪我を負っていながら、大したことはないと、豪快に笑って。
それがきっと私の恋の始まり。
私は恐らく上司に嫌われていたのだろう。
ふと上司に言われた数々の罵詈雑言がフラッシュバックする。
自分の仕事も、上司に言われた仕事も、先輩に押し付けられた仕事も、同期に頼まれた仕事も、後輩が増やした余計な仕事も、文句どころか愚痴すら零さずにこなしてきた。
誰よりも早く出社させられ、誰よりも長く残業をさせられていたとしても気付かないふりをして働いていた。
それなのにお前は仕事が出来ないと罵られたし、私をけちょんけちょんに貶したあとで美人社員を褒めていた。あの美人社員がきちんと仕事をしている姿なんか見たことなかったけれど。
何度か転職しようとしたが、上司にここでの仕事もろくに出来ないお前がよそで通用するわけがないだろうと怒鳴られて断念した。
まぁ今考えてみれば転職などする暇もないほどに働かされていたのだが、当時の私はそれに気付くことが出来なかった。
何故なら仕事に忙殺されていたから。
しかしそんな私は今、その会社ではないところで働いている。
いつものように忙殺されていたある日、会社にどこぞのお偉いさんがやってきたのだ。
そのお偉いさんは私に仕事を辞めて審神者になってほしいと言っていた。
突然そんな事を言われても私は転職未遂を起こしているし上司が何と言うか、そう言って断った。
「主ー、清光だけどー! 今日の出陣編成これでいいの?」
障子戸の向こうから掛けられた声に少し驚きながら、私は返事をした。
「それでいいよ」
と。
これが今の私の仕事だ。
審神者というのは刀に宿った付喪神を人の姿にして歴史を変えようとする時間遡行軍と戦ってもらう……とかなんとか、とにかくそんな話だった。
審神者になったのがあまりに唐突なことだったので、イマイチ理解が追いついていない。
なんせ私はこの職に就くことを断ったのだから。
断ったはずの私が何故ここに居るのか、それはとても簡単なこと。上司が私を売ったのだ。
仕事を理由に断ろうとしていた私を見たお偉いさんは、上司に対して金をちらつかせたし、上司はその金を見てほいほい私を引き渡した。
上司が私の言葉など聞きもせずに金を受け取ってしまったものだから、私はここに来るしかなかった。
わけもわからないまま連れて来られ、わけもわからないまま初めの一振りだと言われた刀を渡され、今は彼らに戦ってもらっている。
最後に聞いた上司の言葉は、
「キミなんか居なくても、有能な彼女が居てくれるから」
だった。
有能とは程遠い例の美人社員の背中を撫でながら。
こうして改めて考えると、私の存在とは一体なんだったのか。
文字通り身を粉にして働いた結果がこれなのか。
いや、仕事というより、やはり上司に嫌われていたからこうなったのだろう。
あれだけ必死に頑張っていたのだから、少しくらい私が居ないと困ると思ってほしかった。
ほんの少しでいいから引き止める素振りを見せてほしかった。
でも、誰一人として引き止めたりはしてくれなかった。
私はこのなんとも言えない気持ちを払拭しようと、小さな溜め息を一つ零す。
深く考えたところでどうしようもないのだ、そう自分に言い聞かせていると、手元で携帯が震えていた。
「主! 主!!」
ディスプレイを確認しようとしていた手が止まる。
出陣したばかりであるはずの清光の、どこか焦ったような声がしたから。
いつもより早い帰還と焦った声に驚いて、私は携帯を放り出して部屋から出た。
「え、どうし……た、の……?」
部屋を出た私の視界に飛び込んできたのは、傷だらけの人だった。
彼らは刀の付喪神だというけれど、そこに居たのはどこからどうみても傷だらけの痛々しい人だった。
私はどうしたのなどと口走ったが、どうしたもこうしたもない、私のせいで彼は怪我をした、ただそれだけだ。
「カカカ! 拙僧の、修行不足である」
「わ、私、なんで……」
自分のせいだということは一瞬で理解したが、そのほかのことが分からない。
何故こんなことになってしまったのか、こうなったときどうすればいいのか。
「ごめん主、俺がもうちょっとしっかり確認してれば……、まずは手入れしてあげて」
そんな清光の声に、私はやっと手入れの存在に気が付いた。
「そ、そっか……て、手入れに……、え?」
あまりの混乱に、手入れ部屋の方向が分からなくなっていたところ、突然目の前の傷だらけの彼、山伏さんが私の身体をぎゅっと抱き締める。それが完全な追い討ちとなり、私はさらに混乱した。
「拙僧は大丈夫であるぞ、主殿」
山伏さんはそう言いながら、私の目尻をすこしごつごつした親指で拭う。
その時初めて気が付いた。自分が泣いていたことに。
「ごめんなさい……っ、ごめんなさい」
「主殿が気に病むことはない」
泣きじゃくる私に、山伏さんは笑いながらそう言ってまたぎゅっと抱き締めてくれる。
しかしそうされると何故だか余計に涙が溢れてきてしまう。
「主殿?」
「と、とにかくまず手入れ、を」
「おお、そうであったな」
と、さも今気が付いたかのような言葉を零した山伏さんは、私をひょいと持ち上げて歩き出す。
「なんで!?」
何故私は怪我人に抱えられているのかな!?
さっきから混乱したままの頭だけど、さすがにこれだけは分かる。私が抱えられている場合ではない、ということだけは。
「まぁいいじゃん、抱えられてなよ主。俺も横で支えてるし」
「すまなんだなあ、加州」
「本当だよ。だから言ったでしょ? そのまま進軍したらこうなるかもよって。うちの本丸は掠り傷以上の怪我人出した事ないんだから」
「拙僧のこれも掠り傷である」
「そういうの、屁理屈っていうんだよ」
混乱する私をほったらかして平然と会話するのやめてもらえませんか?
ちょ、あの、という私の言葉にならない声を聞こえているのかいないのか、彼らは完全に私をスルーしたまま手入れ部屋に辿り着いていた。
「じゃ、さっさと手入れしてもらってきなよ、って……主まだ泣いてたの?」
やっと下ろしてもらえたと思ったら、今度は二人に顔を覗き込まれることになってしまった。
「え? いや、泣いて」
ないはずだけど、という私の言葉は山伏さんの分厚い胸にぎゅっと押し潰される。
「泣くほどのことではないのだ主殿」
ぎゅうぎゅうと抱き締められ、背中を撫でられるとひどく安心した。今までに感じたことのない安らかな心地だ。なのに何故涙は止まらないのだろう。
……そうだ、久しく泣いていなかったから、止め方が分からないのだ。
「ごめんなさい……うっ、うぅ……」
山伏さんは怪我をしているのだから、早く手入れをしてあげなければ、頭ではそう思っているのに、止まることを忘れてしまった私の涙は次から次に溢れ出してきて、ついには子どものように声を上げて泣きじゃくってしまっていた。
しかし山伏さんは呆れることも文句を言うこともせずにただただ私の頭や背中を撫でてくれている。
「山伏さん……」
「ん?」
「私、ちょっと落ち着いたのでお手入れしましょう」
そう言って手入れを始めたところまでは覚えているのだが、その先の記憶がない。
どうやら私は寝落ちしてしまったらしい。
目を覚ましたら丁寧に敷かれた布団に寝かされていたし、しっかりと山伏さんの袖を握り締めていた。
完全に迷惑を掛けたとしか思えない状態だ。
やべぇ、と思いながらむくりと起き上がると、それに気が付いたらしい山伏さんも起き上がった。
どうやら彼はすでに起きていたらしい。
「やっと泣き止んでくれたようであるな」
「あ、あの、ごめんなさい山伏さん、私ずっとずっと泣いてなかったから、涙の止め方がわからなくんぐっ」
何故今また抱き締められたの!? と零すと、また泣きそうだった、と呟かれた。
むしろぎゅっとされたほうが泣いちゃいそうなんだけど、それを言ってしまえば山伏さんは離れていってしまうのだろうか。
なんて、そんな事を考えていると、手入れ部屋の襖が開いた。
「主起きた? え、まだ泣いてんの?」
「泣いてない! でしょ!?」
山伏さんの腕の中から首だけ清光のほうを見れば、
「涙目!」
と言われた。
「疲れてるんでしょ、主。ってことで、山伏は隊長である俺の忠告を無視して進軍しようとした罰として今日一日主が仕事しないように見張っといてよね」
「……? 心得た」
「主は目を離したらすぐ仕事探し始めるから、ちゃんとごろごろさせといてね」
私が口を挟む暇もなく、山伏さんの罰則が決定していた。何故か私を巻き込んで。
「え、ちょ、」
「よし、主殿! ねんねであるぞ!」
ねんね!?
*****
この後めちゃくちゃねんねした。
ずーっと書こう書こうと思っていた社畜ちゃん本丸の話でした。
もうちょっとネタはあるので気が向いたら書くかもしれない。
ちなみにこのしばらく後、審神者会議とかで梗子と知り合ってお友達になります。
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