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□やきもちについて
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「それに彼、フォンカーベルニコフ卿と、小さくて可愛いもの(主に小動物)以外は仕事仕事ーじゃあないか?」
「た、確かに…」
「彼は、彼女しか見えてないよ。そんでもって、そんな彼が他に目移りする可能性なんてない。それを…確信してるんじゃあないかな?信じてるっても言えるかな」
「…信じ、てる…」
おれ的には目から鱗的発言だった。
相手を信じているから相手がモテることを怒りはしない…とは。

「彼女の考えとはちょっと違う気持ちだけど、僕だってそうだよ。渋谷が浮気するとかは思えないしね。きみそういうの嫌いだし」
と、これは先ほどのおれの発言に対する返答だろう。
「好きで、信じてるから妬いたりなんかしない…。好きでいてくれてるって信じてるから…」
「村田…」
愛おしそうな、優しい眼差しが向けられる。

「でもね…。好きで、渋谷が、疑ってるとかそういうのじゃあなくて嫉妬してくれる…。そういうのは、嫌だなんて思わないよ…。むしろ、嬉しいかも…」
村田は、分かってくれているのだ。
おれが嫉妬するのも、村田を信じらないからとかじゃあない。
むしろ村田のことは誰よりも信じている。
村田がおれから心変わりするだなんてちっとも思えない。
そう信じられる程、それだけのものを村田が今までおれに見せ続けてくれてきたのだから…。
しかしおれが思うに…、
「おれ嫉妬深いからさぁっ。自分でもどうかと思うんだけどっ!お前が知らない男にべたべたされたりしたらはらはらして堪らんないんだよ!や、女の人でも何かもやつく気持ちはあるけど、でもそっちは実害はないじゃん?男は狼なんだよ!いきなり強引に力技でことを運んでくる可能性だってない訳じゃあない訳で、そしたら村田の意思とか関係ないというかぁ〜〜っ!!」
と、ぐるぐるしてしまう。
「いやいやそれないから絶対」
と冷静な突っ込みを入れられる。
その根拠のない自信はどこから来てるのですかと!
村田はすっごいいい奴だし可愛いし、それに何せこちらの世界では絶世の美形だという設定だ!
自分のことは案外ちゃんと分かってないというか。
村田って偶によく分からない変なこと言うよな…。

「僕みたいなひょろっこい男の子供相手なんて、そんな狙ってくる男なんていないってぇ〜」
とからからと笑ってくる村田にむっとして、ぎゅっと抱きしめてしまう。

「渋谷…?」
「いーからお前はもう黙っとけ」
そういうとこが村田は分かってないというか、世間ずれしているというか。
だがここでひとつ、分かったことがある。
おれは、独占欲云々以外にも、敵が男も想定しているから余計に嫉妬するのだと。
グウェンとアニシナさんのだって、そういうとこもあるのじゃあないだろうか。
何とゆーか、見てる視点の違い…。
アニシナさんと村田はまた違うだろうけれど、しかし想定する敵の範囲の違いもあるのではないだろうか…と。

こいつは絶対…嫌なことに男にだってそういう変な目で見られてる。
でも!これはおれのだ…!絶対誰にも渡さないっ!と、おれは村田を抱きしめる力を強める。
村田は、おれのこんな男としての気持ちを、ちゃんと分かっているのやらか…。

ぎゅっと、おれの服の背中辺りの所を掴んでくる村田。
「そんな…きみも…好きだよ…」
と…深い囁きが聴こえる。
「村田…」
どくん…と、心臓が跳ねた…。

村田が…好き過ぎて堪らなかった…。
おれの、ちょっと普通よりも強いであろう独占欲さえも、好きだと受け止めてくれる村田…。
どんなおれだって、好きでいてくれると思える安心感…。
その場の雰囲気で言っている訳ではなくて、こいつの、変わらぬ深い想いも感じられて…。
おれをずっと好きでいてくれるとそう思えてしまう、おれがそう思えてしまう程の…。
そんなこいつが可愛くて可愛くて仕方がない。

そんな想いに、おれは余計にこいつをがんじがらめにしばってしまいたくなるのだ。
こいつなら、どんなおれでも好きでいてくれるだろうからと…。
こいつは絶対に、おれを裏切りはしない、変わらずにずっと傍にいてくれるだろう…。
それは、何かが込み上げてきてしまいそうな程嬉しいことだった…。

手放さない…絶対、とおれは、自分のことはいまいち分かっていない村田を更におれがちゃんと見ていなくちゃなと心に誓うのであった…。
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