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□雨降りの放課後
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「あ、雨降ってきた…」
どんよりとした雨の日の空気が、僕はあまり好きじゃない。
待ってもやみそうにないから、もう帰っちゃおうかな。
そう思って、準備を始めた。
…ら、そのとき。
「渚くん、もう帰るの?」
「うん。雨強くなる前に帰ろうかなって。カルマくんは?」
「渚くんが帰るなら、俺も帰るよ。一緒に帰ろう?」
「うん!ちょっと待ってて!」
見たところ、カルマくんは準備万端って感じだから、早くしないと…。
「渚くん、ゆっくりでいいからねー」
後ろから声をかけられる。
「…カルマくんって、エスパー?」
「え?いや、わたわた準備してる渚くんが可愛いから、ずっと見てたいなってだけだよ」
可愛い、という言葉に少し恥ずかしくなる。
…カルマくんから言われると、なんか嬉しい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お、またせ…」
「うん。あ、傘忘れたから渚くんのに入れて?」
意外。しっかり者のカルマくんが…。
「いいけど、僕、折り畳み傘も持ってるよ?そっちの方が濡れないんじゃないかな?」
「分かってないなー、渚くんは」
「どういう…?」
意味を尋ねると、にやにや笑ってはぐらかされた。
「あ、俺、傘持つよ」
「え?いいよそんな…」
いいからいいから、と強引に僕の傘を持つ。
「こういうのって、傘持つのは彼氏の担当だろ?」
恥ずかしくて、思わずうつむいてしまう。
どんな理屈だ。
…でも、嫌じゃなくて。
「渚くんと相合い傘出来るから、雨の日も悪くないね」
「うん…」
そっか。
カルマくんも同じこと思ってくれてるんだ。
――これから、少しだけ雨の日が好きになれそうだ、と思う僕だった。