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□ほんとのことを、教えてください。
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黙って、見てた。
・・・カルマくんが、転入生に何か言われるのを。
・・・そんな転入生に、無抵抗なカルマくんを。
ここに、居たくない。
「渚?」
あの転入生と、カルマくんを見たくない。
〜*〜*〜*〜
「渚くん、帰ろう?」
何も言えなくて、そんな自分が嫌で、逃げだしてしまう。
「・・・渚くん?」
そんな僕を見て、気遣うような声をかけてくれるカルマくん。
・・・僕って、最低だ。
――気遣ってくれるカルマくんを無視して教室から逃げたのだった――
〜*〜*〜*〜
「な、渚くん…?」
今日はどうしたんだろう。
渚くんが出ていった方向を見て、考える。
渚くんの表情を、思い出す。
「あ、そういえば…。」
渚くんのあの表情は、泣きそうになるときの顔。
傷つけてしまったときの顔。
「渚くん…。」
理由はわからないけれど、きっと自分が傷つけてしまったのだ。
繊細で、やさしい彼は、傷ついてしまったのだろう。
「・・・。」
行かないと。
早く渚くんのところに行かないと。
きっとひとりで悪い方に考えてしまうから。
「じゃあな、カルマ。」
声をかけてくれるクラスメートに適当に答えて、駅に向かって全力疾走。
「待ってて!渚くん。」
――どうかひとりで、泣かないで――
〜*〜*〜*〜
「どうして…。」
カルマくんは、僕の所有物じゃない。
僕だけが独占していい人じゃない。
それなのに…。
他の人と話していると、切なくなる。
他の人と話してるほうが、楽しそうに見える。
わかってる。
こんなの、ただの僕のワガママだって。
・・・それでも。
「会いたいよ、カルマくん…。」
「・・・呼んだ?」
「え…っ!? カルマくん?!」
後ろから声かけられて振り向いたら、カルマくんがいた。
「どうしたの?渚くん?」
「どうもしてないけど…。」
「嘘はいけないよ?」
僕の瞳から視線を離さない、カルマくん。
・・・笑ってるのに、笑ってない。
と、思ったら。
「ごめんね。俺、何かしちゃったんだよね?」
「違っ・・・!」
本当に違う。
「・・・?その辺も含めて教えて?」
ね?って笑ってカルマくんは僕を見る。
そんなこと言われたら、断れないの知ってるクセに…。
「僕の、自己嫌悪。」
「ごめん、全然わからないんだけど…。どういうこと?」
「カルマくんが他の人と話してるのが、なんか嫌で…。」
ごめんなさい、と言いながら、思わず目を背ける。
「渚くん・・・。こっち向いて?」
やさしいけれど、拒絶を許さない声。
おそるおそる顔を上げると…。
「なんで、笑ってるの?」
「いやー。つまり渚くんはヤキモチ妬いてくれたってことなんだよね?可愛いなーって思って。」
・・・。
「そうなの、かな?」
「そうなんだよ。」
「じゃあ、転入生くんになんて言われてたの?」
「ああ、あれ? お前は弱いから殺さないって言われただけ。」
「ほんとに?」
「ほんとに。」
いつの間に僕は、こんなに疑り深くなったんだろう…。
「渚くん、可愛い…。」
「可愛くなんてないよ…?」
「可愛いかどうかなんて、俺が決めることだもん。…渚くん、可愛い。」
そのままぎゅっと抱き締められる。
「ねえ、カルマくん…。」
――僕、カルマくんに好かれてるって、自惚れてもいい?――