共同企画!

□授業なぅ
1ページ/2ページ


朗々と機械的な声が教室に響き渡る。時は午後、ついでにいうと悠舜の古文の授業だ。

「…はい、そこまででよろしいですよ」

生徒の一人がホッとした表情で席に座る。悠舜はまた次の生徒の名を呼び、朗読をさせた。

「…そこ。"せんかたなし"はその訳ではなく"どうしようもない"とこの場合はするように」

「はっ、はい」

「ほかはとてもよろしかったですよ」

しかし、彼の指導は遠慮というものがない。あの笑顔がなければただの鬼教官である。


ニッコリ。


…あればあったで恐ろしいのだが。

「次、紅さん」

「はい」

「………素晴らしい。とても模範的な答えです。次…藍くん」

「うむ。……どこをだ?」

堂々をきいてません宣言をした龍蓮に、隣の席の秀麗はさっと青ざめる。

「き、九十五頁の八行目よ」

「まず、教科書なるものは風情がない。そのため持ってくるという行為をしたことはない」

「藍、くん…?」

「やっ、やばい!!悠舜先生の顔がだんだんを凄みのある笑みに!」

うわぁ、と珀明が頬をひきつらせる。一番前の席の彼にとってすれば般若の顔、という感じなのだろう。恐ろしい。

「…よし、ではこの笛にのせて気持ちを届けよう」

「ギャ――――!!レンのやつが笛を取り出したぞ!寝てる奴叩き起こせ耳栓つけろぉお!」

クラスの誰かが叫ぶと同時に、龍蓮が笛に口を付ける。

…ちなみに、止めるという手段は誰も実行しようとはしない。


ただの死亡フラグになるし、何より笛が重たい。この間、劉輝が被害にあったばかりだ。

――右足の小指、全治二週間。

なんとも情けな…いや、痛々しい。

(ああ、死んだな)

クラス全員がそう思った、その時。


スーッ

音が出ない。

龍蓮がぎょっとしたように笛を見た。おかしいところはどこにもない。見た目上は。

じぃーっと笛を穴があくほど見つめていると、悠舜がやってきて笛を取り上げた。唖然とするクラスを見回して、

「さて、仕切り直しです。藍くんはバツとして後ろにたっていなさい」

「むぅ…」

「いいですね?」

「…ハイ」

***

「助かりました、棒くん。君が持っている"本物"はお兄さんの方に渡しておいてくださいね」

「はい、わかりました」

「すみませんね、大変でしたでしょう」

「いえいえ、この程度のパシ、いやお願い、なんてことないっすよ」

こんな裏り引きがあったとか、なかったとか。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ