共同企画!
□授業なぅ
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朗々と機械的な声が教室に響き渡る。時は午後、ついでにいうと悠舜の古文の授業だ。
「…はい、そこまででよろしいですよ」
生徒の一人がホッとした表情で席に座る。悠舜はまた次の生徒の名を呼び、朗読をさせた。
「…そこ。"せんかたなし"はその訳ではなく"どうしようもない"とこの場合はするように」
「はっ、はい」
「ほかはとてもよろしかったですよ」
しかし、彼の指導は遠慮というものがない。あの笑顔がなければただの鬼教官である。
ニッコリ。
…あればあったで恐ろしいのだが。
「次、紅さん」
「はい」
「………素晴らしい。とても模範的な答えです。次…藍くん」
「うむ。……どこをだ?」
堂々をきいてません宣言をした龍蓮に、隣の席の秀麗はさっと青ざめる。
「き、九十五頁の八行目よ」
「まず、教科書なるものは風情がない。そのため持ってくるという行為をしたことはない」
「藍、くん…?」
「やっ、やばい!!悠舜先生の顔がだんだんを凄みのある笑みに!」
うわぁ、と珀明が頬をひきつらせる。一番前の席の彼にとってすれば般若の顔、という感じなのだろう。恐ろしい。
「…よし、ではこの笛にのせて気持ちを届けよう」
「ギャ――――!!レンのやつが笛を取り出したぞ!寝てる奴叩き起こせ耳栓つけろぉお!」
クラスの誰かが叫ぶと同時に、龍蓮が笛に口を付ける。
…ちなみに、止めるという手段は誰も実行しようとはしない。
ただの死亡フラグになるし、何より笛が重たい。この間、劉輝が被害にあったばかりだ。
――右足の小指、全治二週間。
なんとも情けな…いや、痛々しい。
(ああ、死んだな)
クラス全員がそう思った、その時。
スーッ
音が出ない。
龍蓮がぎょっとしたように笛を見た。おかしいところはどこにもない。見た目上は。
じぃーっと笛を穴があくほど見つめていると、悠舜がやってきて笛を取り上げた。唖然とするクラスを見回して、
「さて、仕切り直しです。藍くんはバツとして後ろにたっていなさい」
「むぅ…」
「いいですね?」
「…ハイ」
***
「助かりました、棒くん。君が持っている"本物"はお兄さんの方に渡しておいてくださいね」
「はい、わかりました」
「すみませんね、大変でしたでしょう」
「いえいえ、この程度のパシ、いやお願い、なんてことないっすよ」
こんな裏り引きがあったとか、なかったとか。