共同企画!

□腹黒現る!
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「俺だけど」

扉を開け、にんまりと笑う人物は、なんと楊修であった。彼は生徒会顧問の教師。あまり関心がないような風を装ってるくせに、何かあればそれみろとイヤミな顔つきで駆けてくるのだ。特に絳攸が気に入り(?)のようえ、最近は穴を見つけるたびに嬉々としてやってくるようになっている。

「うっ、…楊修先生」

「何、その嫌そうな顔。それより、ちょっといいかな?」

「うわ、くるよイヤミ攻撃」

燕青が、ほんの小さな声で呟く。幸いなことに楊修には聞こえていないようで、ニコニコと不気味な笑みのまま、絳攸の元へやってきた。

「新生徒会になって結構経つけどさ、仕事にはなれたかい?」

「え?あ、はい、いちお…」

「書記と会計のいない仕事状況には」

「っ!!」

絳攸の顔が一瞬にしてこわばった。イヤミの内容を察知したようだ。うわぁ、怖いなぁ。と楸瑛は心でひっそり十字を切る。彼を救いたまえ、アーメン。

「あのね、いくら会長以外指名制だと言っても、二つも席に空きがあると体裁的に問題があるんだけどなぁ」

「し、しかしまだ五月でして……」

「GW終わっても空席だから問題だと言ってるんだ!まったく、絳攸、君はどこかで抜けているよね」

「……すみません」

けっちょんけちょんに言われた絳攸は身を縮こませる。つらい、と全身で表現していた。たしかに、五月も中頃、生徒会に空席があるなんて非常事態もいいところだ。

一応、適役の人間はいくらか見繕っているのだが、イマイチピンとくる人間が居ないのだ。はぁ、とこれみよがしに楊修がため息をつく。

そして、毒舌の矛先が別の方向へと向いていく。

「楸瑛、燕青。君たちがついていながら、どういうことだ?」

『すみません…』

「謝るだけなら猿でもできるよ。行動で示さないと意味がないことは身にしみてわかっているだろう?」

毒舌すぎる。これはひどい。

あっという間に巻き込まれてしまった二人は、心が折れるようなお言葉(毒舌)を延々八分ほど聞かされた。

***

「――――というわけです。わかりましたかいかに自分たちがたるんでいるかを」

『ハイ…モウシワケアリマセン……』

「ふぅ。……ああすっきりしました。それでは本題です」

(前フリ長い辛い)

「何かな燕青」

「なっ、なんでもないっす!」

「よろしい。……では、長らく待たせてしまいましたね、入ってらっしゃい」

ぱんっ、と一回手を打って楊修は扉に目を向けた。そろそろと、二人分の影が顔を出す。見覚えのある顔に三人は目を丸くし、あっけにとられる。

「しゅ、秀麗に…そちらは?」

「はっ、はじめまして、こ……李会長。僕は珀明といいます」

嬉しそうに頭を下げ名乗った青年のその名に、絳攸は聞き覚えがあった。よく秀麗の話に出てくる、気が利いて優しい心の持ち主である珀明という人物。彼がその「珀明」か。とひとり頷いた。

「あの、それで楊修先生、私たち、よくわからないまま連れてこられたのですが…」

「ああうん。ごめんね長く待たせて。まぁ簡単に言うと、二人には生徒会役員になってもらいたいんだ」

「ええっ!?」

「はいっ!?」

(だろうと思った…!)

この手の行動を見慣れてきた三人は、がっくりと肩を落とす。最初からお前らには期待してねーよイヤミだけ言ってあとは人を送るから使ってやれ、といった感じだ。今の流れだと。心を砕くには十分すぎるほどのスパイスがきいている。

だが、確かに珀明のことは分からないためなんとも言えないが、秀麗は優秀だ。とくに会計などに位置づけたらとてつもない腕を発揮してくれること、間違いなしであろう。

――――なにせ、家計が火の車だ。切り詰め切り捨ては得意中の得意…だと思う。

絳攸が静かに算段を巡らせている間に、説明が終わったのか楊修の声がやんだ。ふと暇人二人に目をやると、ガクガクと小さく震えているではないか。

…後に聞くところによると、新入り(仮)への説明の中にとんでもないイヤミ毒舌の数々が含まれていて、すでにライフはゼロの暇人二人の心を貫きぎったぎたのめっためたにしてしまったらしい。

――――聞いていなくてよかった。すでに俺のライフはマイナス値だ。

「えーっと、……絳攸先輩、話はわかりました。私でよければ協力させてくださいっ!」

「僕もぜひ!会長のお役に立てるなら、たとえ火の中水の中!土の中や雨風吹き荒れる場所にまでかけつけるいいえむしろついていくつもりですっ!」

「有り難いが可能な範囲で頼む。というか、俺はどんなことをしたらそんな状態になるんだ」

後半、ぽつりとつぶやくが、その言葉は誰の耳にも届かず消えた。


今日の成果(楊修の):生徒会書記、会計を拾ってきた。ててーん。


「……なんだこれぇええええええええ!」



***


「……………」

「……。ふぅ、わかりました、わかりましたからその溢れ出る殺気をしまってください!」

「あいつをいじめるのはほどほどにしたまえ。私の特権なのだからね」

「嫌ですよ。私が楽しいので」

「次見つけたら扇で額をうつぞ」

「おや怖いですね、彼のお父さんは。せいぜい見つからないようにやりますか」

「おい話聞いてたか」





――――――――――――
なんだか楊修さんが毒舌家に。ポイズン楊修と呼ぼうゲフン
絳攸様がカワユすぎてついついやりすぎましたごめん(笑)
そして暇人二人の空気っぷりえ……。扱いがひどいのはひとえに愛ゆえなのです☆ミ








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