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□言いたいけれど、言えなくて。
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『お誕生日、おめでとう!!』

さっきからずっと、保存しては再編集する、という無駄な行為を繰り返す僕。

「どーして、送れないのかなぁ…。」

たったヒトコトなのに。

でも・・・。

「送ったら、終わっちゃうよね…。」

少しでも長く、君とつながっていたいのに。

なーんて。

僕、ちょっと女々しすぎ?

で、でもでも!

この機会を逃したら、次、君とつながれるのはいつになる?

明日?明後日?

…そんなわけない。

あー、もう。どうしたらっ…。

・・・あ、そうだ!

保存しているメールを編集し直す。

『今から会える?』

会って直接、伝えよう!

そして、次の約束、取り付けちゃおう!

そうだ!そうしよう!

善は急げって、昔の人も言ってたし!!

・・・・・・。

・・・そして、まあ、送った後の自己嫌悪。

拒否されたらどうしよう?

断られたらどうしよう?

不安だらけで、やっぱり送らない方が良かったのかとさえ思う。

君からの返信。

早くきて。

ああ、でもやっぱりこないで。

真逆の感情でゆらゆら揺れ動く、僕の心。

ケータイのバイブ音。

「うわぁ…。びっくりした…。」

『いいけど…。っていうか、今、オレ…。』

ん…?

これ、一体、どういう意味…?

って、あ!あそこ…。

「おーいっ!村田!」

「し、渋谷っ?!」

少し遠くに、僕を呼ぶ渋谷。

子どもみたいに、無邪気に笑って、大きく手を振ってる。

「ちょっと待ってて!すぐ行くからっ…!」

思わず、僕の口元も緩む。

そこからそこまでの距離さえも、もどかしい。

今すぐにだって、伝えたい。

ねえ、渋谷っ!

―――「誕生日、おめでとう!!」
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