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□君には言わない
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「ねえ、ウェラー卿。」
「二人きりのときは、なんと呼ぶ約束でしたか?…ケン?」
さわやかで、胡散臭い笑顔。
・・・つくづく僕は悪趣味だと思う。
「・・・コンラッド。」
良くできました、と褒める目の前にいる男。
「で、なんの用ですか?」
「別に。ただ呼んでみただけ。」
そう、別に顔が見たかったとか、話しがしたかったとか、そういうわけではない。
そう、断じて違うのだ。
・・・なのにどうして。
「ね、コンラッド…。」
なんでそんなに嬉しそうなわけ?
なんで無駄にニコニコしてるわけ?
「なんか、気持ち悪いんだけど…。」
「はは、気持ち悪いなんてヒドイですよ?」
「だって、用もないのに声かけられて、ニコニコしてるなんておかしいよ?」
僕がそう言ったとたんに、キョトンとした顔をする。
「だって、大好きなケンと一緒にいられるんですよ?嬉しくないわけないじゃないですか。」
「ちょっ!ばかっ!…な、何言ってっ!」
「照れているんですか?…あいかわらず可愛いな。」
「か、可愛いなんて言うな!」
僕は相当悪趣味だ。
こんな胡散臭い男に可愛いと言われて嬉しいなんて。
こんなヘタレでどうしようもないヤツのことが好きだなんて。
「・・・好きですよ、ケン。」
―――僕も、なんて絶対返してやるもんかっ―――