*夢の入口*

□卒業式
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ついに来ちゃった…


卒業式当日。



私は事前に伝えといた。
卒業式の日、総司先輩に会いたいです。と…


返事は、いいよ!だった。



自分の卒業式でもないのに、緊張してる私。
在校生の席につくと、運よく卒業生が通る通路側だった。


普通科の生徒から卒業生が入場して、次に工業科の生徒が入場する。
通路側にいても、総司先輩は私の顔を知らない。


総司先輩が入場してきても、私の顔を知らない総司先輩は私を視界に入れる事はなかった。


でもいいの。
当たり前の事だから…
卒業式後に、総司先輩の視界に映れるから…


卒業式中でも、総司先輩とのやり取りは続いてた。


『総司先輩、見えましたよー!
私、席が卒業生が通る通路の所なんです!』



「そーだったんだ。
全然気付かなかったよ。」



『総司先輩は私の顔知らないからしょうがないですよね!
今日は、式後どこで会えますか?』



「門の所でいいんじゃない?」



『わかりました!
嬉しいです。
総司先輩のネクタイがもらえるなんて!』



「ネクタイなんて、どーするのさ(笑)」



『総司先輩の物が欲しいんです!
じゃぁ、門の所で待ってますね!』



卒業生が起立して、また通路を通って退場して行く。


総司先輩が通る時、凝視したけどこちらを見る事はなかった。


でも、あと少しで総司先輩に会える。

話が出来る!と思ったら、嬉しい反面緊張でおかしくなりそうだった。


卒業生が退場して、在校生も退場し始める。
それから1度教室へ戻り、HRをして解散になった。



「サチ大丈夫?」


『だっ、だめっ!
ヤバイ…緊張して死にそう!!
やっぱ1人て行くなんて無理!
千鶴ー。
一緒に付いてきて…』


「付いて行くのはいいけど、話す時はきちんと話すんだよ?
恥ずかしいからって、私に会話振ったりしちゃダメだからね!」


『わ、わかった!
総司先輩を待たせたら悪いから、早く行こ!』



千鶴と2人、総司先輩が来るのを正門で待つ。
回りは、想いを寄せる先輩に思い出の品をもらおうと、在校生が先輩と話してる姿ばかりだ。



「総司先輩遅いねー。」



『うん。』



遅い。
それにしても遅い。
先輩、後輩の姿でごった返してた正門は、今となっては数人いる程度だ。



「1回、総司先輩に連絡してみたら?
総司先輩はサチの顔知らないから、サチが正門に着いてから教室出て来るのかもしれないし!」



『そ、そーだよね!
連絡してみる。』



『もう正門にいますが、総司先輩はどこにいますか?』



返信が来るまで、何か嫌な胸騒ぎがした。
もう総司先輩は校内にいないんじゃないかって…






「僕は、彼女が迎えに来てくれたからもう帰ったよ。」



『えっ?』



「どーしたの?サチ」



『総司先輩、彼女が迎えに来たから帰ったって…』



「えっ…」



『………。
ふぇっ…うぅっ…
千鶴ー!』


「サチ…。
ちょっとこれは酷いよ。
総司先輩、何考えてるんだろ…
サチ、ずっと待ってたって総司先輩に言いなよ!
私、こんな扱い許せないよ!」


『うん…。
でも、総司先輩には…彼女がいるから…しょうが…ない…よね…』


「彼女がいても、サチに会うって約束したんでしょ?
いくらなんでも、無責任すぎるよ?」


『一応、総司先輩に言ってみる。』





『もう帰っちゃったんですか?
門で会うって約束だったから、総司先輩の事ずっと正門で待ってたんですよ?』



「そうだったんだ。
確かに門でって約束したけど、正門か裏門かは決めてなかったね。
僕は裏門から帰ったんだ。
誰にも声掛けられなかったから、てっきりサチちゃんは帰ったんだと思ってたよ。」



『私が総司先輩との約束忘れて帰る訳ないじゃないですか!
先輩に会えると思ってずっと待ってたのに…』



「僕もう帰っちゃったし、しょうがないよね。」



『わかりました。』




それを最後に、私と総司先輩のやり取りは終わった。

それから連絡が来る事もなかったし、私からする事もなかった。


最後の最後まで、総司先輩は私に一欠片の興味もなかったんだなって、痛い程わかったから…
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