*夢の入口*

□卒業式
1ページ/2ページ

下校する総司先輩を、たまに見付けては一方的に見つめるだけの日々。


やっぱり声を掛ける事は出来なかった。


でも、確実に見掛ける事すら出来なくなる日が迫っている。


卒業式だ…



『はぁー。』


「どーしたの?ながーいため息ついて。」


『もう先輩達卒業しちゃうんだなぁと思って…』


「サチの場合、先輩達じゃなくて総司先輩がでしょ?」


『うーん。
てかさ、このままじゃダメだよなぁって思ってる。
総司先輩はさ、まだ私の顔すら知らないじゃん?
せめて、顔見知りくらいにはなっておきたいなぁなんて…』


「サチ恥ずかしがりやだもんねぇ。
てか、連絡取り合ってるのに顔知らないとか、サチくらいじゃない?」


『私は千鶴みたいに可愛くないから、ちょっと怖いんだよね。
うわっ、ブスーとか思われたらどーしよーって。』


「そんな事ないよ!
サチの事好きで告って来る男子いるのに、サチが見向きもしないんじゃん。」


『私さ、自分が好きじゃないと付き合ったりとか出来ないんだよね。
少しいいなーと思って付き合っても、やっぱりダメだーってすぐ思っちゃう。
それって相手にも悪いし、自分もいい思いしないから、取り敢えず付き合うとか出来なくて…』


「そー言えば、サチは平助君以来彼氏いないもんね。」



『うん。』



平助は、同じ普通科の1年生。
いきなり連絡先聞かれて、毎日それこそ授業中でも連絡来たりして、人懐っこくて可愛かった。
いつからか平助から猛アピールされるようになって、私が折れる形で付き合った。


平助の事好きだったけど、何か恋愛と違う気がして、結局私から別れを切り出した。
平助は全然納得してくれなくて、別れてからも毎日連絡もらってアピールされて。


でも気持ちが変わる事がなくて…
今では避けられちゃってるのかなぁ…
話す事はない。



そんな事があり、余計中途半端な気持ちで彼氏なんて作れなかった。


片思いすらする事なく過ごしていた所に現れた、というより、勝手に見付けた。
同じバッグの総司先輩。


先輩に彼女がいなかったら、私も片思いして総司先輩が卒業するまでに必至にアピールとかしちゃってたのかな?と思う。



『千鶴ー。私、卒業式の日に総司先輩と会おうかな…』


「絶対その方がいいよ!卒業式終わってから会っとけばよかったー!なんて思っても、遅いんだからね!!」


『そーだよね!
うん。
総司先輩に会う!
そして、ネクタイ貰いたい!!』


卒業式終わったらきっと会う事はない。
ブスって思われてもいい!
その後会う心配がないなら、卒業式の日に頑張ってみようと思った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ