reincarnation
□No.1
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「どうして僕が君の世話をしなければならないんだ。
困っているなら警察にでもいけばいい」
「あら、冷たいのねハリネズミさん。
女の子のお願いくらい聞いてくれてもいいじゃない?」
あと2mの所まで迫った彼女。
すると僕のそばに付きっきりだった小鹿が彼女へと近寄る。
「それに直感したの、この子が近づくなんて、あなたはきっと優しい人なんだろうって」
子鹿を撫で、彼女また笑った。
眩いばかりにその笑顔は美しかった。
「僕も忙しいんだ。君の世話なんて見ていられない。帰ってくれ!」
「あら、あなただって帰り道が分からないのに?こんな山奥からどうやって抜け出すの?」
「……それは───」
それは君には関係ない、そう言いかけたところで僕の言葉は止まった。
目と鼻の先に彼女がいたからである。
すると彼女は膝を折り、僕と目線を合わせたかと思うと、ふわりと僕に抱きついた。
「っ…!?何を!」
俊敏な動きに対応が遅れた。
引き離そうと彼女の腕を掴んだその時。
「お願い、追われてるの。
私を───という人のところまで連れて行って」
「え……?」
彼女は僕にしか聞こえない声で懇願してきた。
引き離した彼女の瞳は揺れていた。
『お願いよ、シャドウ……』
ふと、蘇るマリアの声。
彼女の表情はまるでその時のマリアだった。