復讐貴族

□File1.ガラスの靴のお姫様
2ページ/19ページ

あれから何日が過ぎただろう。金髪の少年は埃だらけの屋根裏でひとり、翠の目でぼんやりと外を見ていた。

「……」

窓の外では、人々が慌ただしく動いていた。王子が婚礼を挙げるらしい。

「……うぜえ……」

彼−アーサーは窓から目を背けると、ふて腐れたように床にごろりと寝転んだ。

天井を見上げているうちに、いつのまにかアーサーの脳裏には王子の姿が浮かび上がってきていた。

「……本当なら……俺が王子の隣にいるはずだったのに……」

そういう彼の翠眼には、涙がうっすらと浮かんでいた。

「……憎い……」

ギリリと歯の奥で音がした。

「イヴァン母さんも兄貴たちも……みんなみんな憎い……あいつらのせいで、俺は……」

アーサーの翠眼の奥には、醜く笑う継母と二人の兄の姿があった。

「フランシス王子……俺は……好きなのに……なのにどうして……」

その時だった。

−コツコツコツ−

「……?」

アーサーが起き上がると、窓の外には真っ黒な黒鷲が真っ白な便箋をくわえてとまっていた。

「……黒鷲?」

アーサーが不思議に思い、窓を開けてやると黒鷲はアーサーの手にそっと便箋を押し付けた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ