復讐貴族
□File1.ガラスの靴のお姫様
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あれから何日が過ぎただろう。金髪の少年は埃だらけの屋根裏でひとり、翠の目でぼんやりと外を見ていた。
「……」
窓の外では、人々が慌ただしく動いていた。王子が婚礼を挙げるらしい。
「……うぜえ……」
彼−アーサーは窓から目を背けると、ふて腐れたように床にごろりと寝転んだ。
天井を見上げているうちに、いつのまにかアーサーの脳裏には王子の姿が浮かび上がってきていた。
「……本当なら……俺が王子の隣にいるはずだったのに……」
そういう彼の翠眼には、涙がうっすらと浮かんでいた。
「……憎い……」
ギリリと歯の奥で音がした。
「イヴァン母さんも兄貴たちも……みんなみんな憎い……あいつらのせいで、俺は……」
アーサーの翠眼の奥には、醜く笑う継母と二人の兄の姿があった。
「フランシス王子……俺は……好きなのに……なのにどうして……」
その時だった。
−コツコツコツ−
「……?」
アーサーが起き上がると、窓の外には真っ黒な黒鷲が真っ白な便箋をくわえてとまっていた。
「……黒鷲?」
アーサーが不思議に思い、窓を開けてやると黒鷲はアーサーの手にそっと便箋を押し付けた。