03/31の日記

11:00
Mono96 story
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―どうでもいい、当たり前。
そんな中で、何かが確実に僕の中で変わっていった。






子供の頃の記憶を思い出すという行為は僕にとっては複雑なものだ。
僕の家はそう珍しくない、両親共働きの家だった。小学校に上がって間もない僕は家に帰り鍵を開け、おとなしくテレビを見たりしていた。お腹がすいても家にはスナック菓子の類いはなくただ母親が帰って来るのを待っているだけ。
父親は、弁護士で日々忙しそうだったが6才の子供に弁護士の仕事など理解出来るわけもなく、家に帰っても書斎に篭って仕事をして構ってくれないことに寂しさを感じていた。
母親は外科医で夜勤で家に帰って来ない事もあれば、手術とかで帰りが遅いのも日常茶飯事。僕はいつも一人だった。
悪戯をしても母親は
「何してるの?私の仕事を増やさないで頂戴」
と言うだけで、学校の先生のように叱ってもくれない。テストでいい点数をとっても
「そう。良かったわね」
という興味のなさそうな反応に僕が不満を感じていたのは言うまでもない。頭を撫でて褒めてくれるのはいつも父親で母親にされた事はない。その父親にでさえ叱られた事がないのだ。
確かあれは、僕が中学生の頃だっただろう。

俗にいう悪友と悪戯したのが先生にばれたのだ。勿論親が呼ばれるわけで。友達の親はすぐに来たのだが、僕の親は来なかった。両親とも連絡が着かないとの事だった。
石を投げていて窓を割るというたいした事ではなかったが普段から要注意生徒として見られていたために親が呼ばれたのだ。僕は友達と母親が帰った後、担任にこってりと叱られた。友達は母親に叩かれたりしていたけど、担任は僕にそんなことはしてくれないし親だって同じだ。どうにかして親に構って欲しくて、髪を染めた。茶色とかじゃなく今で言う、ビジュアル系と言われる人たちの感じの金髪にした。
だけど母親は
「そんな事してる暇があったら勉強したらどう?」
と僕を一瞥しただけで、寝室に行ってしまった。この頃の僕は自分で夕飯は作っていたので母親は母親らしい事を何一つしなくなった。父親に関しては
「やりたいようにしなさい。お前の人生なのだからな」
と僕の事を見放したような感じだった。
親がウザいとか言う友達が少し羨ましかった。





僕が今の仲間と出会ったのは高校一年の時だった。相変わらずの金髪だった僕は、裏庭で授業をサボっているときに声をかけられたのだ。
「君さ、選択で音楽とってる一ノ瀬将だよな?」
彼が誰なのか僕にはわからなかった。誰だこいつ。
「俺は高橋康毅。同じ選択音楽」
どうやら僕の心の声は言葉となって漏れていたらしい。
「僕になんの用?」
「今、バンドでボーカル探してるんだ。一ノ瀬歌上手いから入ってくんない?いや、入れ」
という感じで無理矢理連れて行かれたのが始まり。
『Black Skull』というのがそのバンド名だった。康毅ともう一人、長曽我部祐樹がギター。平塚亮平がベース、佐藤健人がドラム。つまり僕を入れて5人になる、と康毅は説明した。
とくにやりたい事などなかった僕は彼らとバンドを組み、徐々に夢中になっていった。
こうして現在に至る。
大学に入学した僕らはインディーズバンドとして活動を続けていた。ビジュアル系バンドとしてそれなりにファンもいたしライブをすれば客が集まった。
ただメジャーデビューをしていない僕らは収入も少なく、生活があり、授業があり楽ではなかった。
授業にバイトとバンドの掛け持ち。だけど誰も『Black Skull』を解散しようとは言わなかった。僕らは目標であるメジャーデビューを果たす為に、路上ライヴを行ったり、ライヴハウスでの演奏、CDのリリースといろいろと取り組む事にした。
バンド内での呼び名も決めた。僕がSho-u、康毅がKOU、祐樹が、かべ、亮平がryo健人が研。
これからが僕らの始まりだ。

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