luv*story
□届かない。
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1...side凛菜
ガラガラガラ。
「……。」
誰もいない教室を開ける。
いつもの匂いが新しく感じた。
今日は2学期の始業式。夏休みが終わって、初めての登校日。
ストンッ。
いつもの席に座る。ふと、うーちゃんの席を見た。うーちゃんはまだ来ていない。
ガラッ。
「おは…よう。」
私は自分でも声が控えめになるのがわかった。当然、けいちゃんも気づいてたと思う。
「……。」
こっちをジッと見て、けいちゃんは他のクラスにフラフラッと行ってしまった。あれは、中1の1月頃のことだった。けいちゃんと私は付き合っていた。それも、毎週会う日を決めるぐらいに仲が良かった。
―――突然訪れた別れは、1ヶ月すらたっていなかった。
<めんどうくさい>
その一言だけだった。
たった7文字なのに、心に重くのしかかった。
それはきっと今も……。
けいちゃんには話しかけない。見もしない。気にしない。……フリ。
それが、今の私にできる精一杯の強がりだった。
でも、もう好きじゃない。私は勇が好き。あの、おもしろくてカッコいい勇が好きだから。
でも、けいちゃんを見たらいつもより心拍数が上がる。
まだけいちゃんを意識していることが激しく自己嫌悪だった。
「はよっ。」
勇が廊下で通りすがりに挨拶をしてくれた。驚いて、言葉が上手く出なかった。
「お前、何テンパってんだよ。」
勇は笑いながら私のおでこをこづいた。ヤバイ。今きっと顔真っ赤だ。
「おっ。勇。はよっ。」
けいちゃんが戻ってきた。
「よっ啓太。お前宿題やってねーんじゃねーの?」
「あっやべっっ!!」
勇のほら見ろっという笑みに、私は自然と笑っていた。
すると、けいちゃんと目があった。
『しねきもい』
口がそう動いた。
このどこか睨むような冷たい目を見るのは2回目だった。
1回目は別れを告げられた時。
もう見たくないと思った目だった。
私は反射的に教室を出ていた。
うーちゃんと入れ違いになった。
「おはよー。って無視?」
その時は言葉すら届いていなかった。
どうして私にそんなこと言うの。
こんなことになるなら……
付き合わなければよかった。