文
□ずっと一緒
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「ほら、早くしないと幼稚園遅れるぞ、グズグズするな」
朝
マンションの一室から聞こえてくる他愛の無い会話から分かるのは
父が子を、早くしろ、と急かす様子
そう、まさに今グズグズする息子(義)、律を、父(義)、高野政宗が幼稚園に連れて行こうとしていた。
「ちょっとまって、ぼくのせいざのじゅんいまだなの」
どうやら律は、毎朝欠かさず見ているニュース番組「アラームテレビ」の1番最後のコーナー『今日の運勢 星座ランキング』に、まだ自分の星座が出ていないからとテレビの前から離れないのだ。
「子どもはそんなこと気にするな、お前は今日一日しっかり遊んで、飯食って、寝れば良いから、だから早く来い、本当に遅れるぞ」
「まだでない・・・」
「はぁ・・・」
痺れを切らした政宗は、せっかく持った律の荷物を玄関に下ろし靴を脱ぎ捨てて
テレビの前から離れない律を無理矢理引きずり出し靴を履かせた
そんなことをされた律は
「あーーーっ!じゅんいっ!ナンキングーっ!」
舌ったらずにランキングをナンキング叫ぶ律に
政宗はイライラしつつも律の手を引いて駐車場へ向かった。
幼稚園へ向かっている最中
車の中でも律は「おとうさんのせいでナンキングみれなかった」と、政宗に順位が見れなかった悔しさを訴えていた。
しかし、こんな事はよくあることで、原因は毎回、寝坊する律にあるため、政宗は律の言葉を軽く受け流していた。
「じゃあ、よろしくお願いします。
律また後でな」
やっと幼稚園に着き
政宗は先生に挨拶をして律を預けた。
「ちゃんとケーキ買ってね」
先生に手をつながれたまま
自分にブンブンと手を振ってくる律に政宗は微笑みながら手を振り返した。
今日は仕事を早く終わらせなければ・・・
そう、3月27日の今日は
律の5歳の誕生日なのだ
プレゼントは既に購入済みで
あとはケーキだけ買えば良いので、政宗は通勤中、車の中で何味のケーキが良いだろうか・・・ と、考えていた。
都合よく今日は仕事が昼までで終わるので店に行ってからでものんびり考えれる。
早く家に帰って、プレゼントを渡した時の律の喜ぶ顔が見たいと、ポーカーフェイスの政宗は、表情には出していないが、少なくとも心の中ではワクワクしていた。