幼馴染みのトキヤくん

□24
1ページ/1ページ














『入学する前からずっと、この想いは変わってないよ……っ』





ぽろぽろ、と。
言葉と共に零れ落ちる雫が、妙にゆっくりだった。


あ……私、泣いてるじゃん。


せっかく嘘をついてきたのに。

これじゃあ、全部台無しだ。



けど、もう後には戻れない。

なら、望むことはたったひとつ。





『…だから、断って。トキヤ』





霞んで見えない視界にトキヤを映しながら、私は笑った。


今度は、作り笑いじゃないよ。

だって、本当のコト、言えたんだもん。



苦しいけど、辛いけど。

悔いはないの。





だから、お願い。


トキヤも笑って、「ごめん」って言って。




そうすれば私は、諦められる。


諦められる。






「……嫌だ、」


『っ、!?』






それなのに。




どうして貴方は、私を抱き締めるんですか?


違うよトキヤ、そうじゃないよ。

慰めて、なんて言ってない。



早く、私を突き放してよ。





『っ、な……んで、』





しかし私の意思とは裏腹に、いっそう腕の力は強くなって。いっそう私の体は締めつけられて。

胸が、苦しくて。


私はまた、涙が溢れる。






「本当に貴方は、馬鹿ですね、」






頭上から柔らかい声が降った。
私の鼓膜を震わすそれは、間違いなく大好きな彼のもの。



私を抱き締める彼が、なんだか微笑んでいるような気がした。












2012.06.19.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ