幼馴染みのトキヤくん
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『おはようトキヤっ!』
教室に入って真っ先に見つけた見慣れたシルエットに、いつものことながら顔が綻ぶ。
そして私はいつものように、しゃんと伸びた背中に向かって声をかけた。
「あぁ、おはよう名無し」
顔をこちらに向けて目を細める彼は一ノ瀬トキヤ。私の幼馴染みであり、あの有名な国民的アイドル、HAYATOでもある。
トキヤはとある理由で、この早乙女学園に在学している。理由を話すと長くなるのだけれど。
このことは学園長さんと一部の先生、それと幼馴染みである私しか知らない。
『今日も見事な眉間の皺だね!』
「うるさいですよ」
『あははっ!』
───いつからだろう。“幼馴染み”が、“片想い相手”になったのは。
小さい頃から芸能界入りしていた彼は、いつだって私には輝いて見えた。そして、彼の曲を聴く度に心を動かされて、いつか私も、トキヤのために曲を作りたいと思ったんだ。
そこからは自分との闘いだった。音楽の知識なんて皆無だったから、私は一から猛勉強。
辛かった。何度も挫折しそうになった。でも、そんなことより、少しでもトキヤに近づきたかったから。だから頑張れたのだ。
その結果、私は早乙女学園に入学できてトキヤと同じSクラスになれた。そして、こんな風に毎日を過ごせている。
それが、何よりも嬉しいんだ。
早乙女学園は恋愛禁止で、私のこの想いは淡いものだけれど、それはお互いの夢のためでもある。だから、今のままでいいと思った。
毎日トキヤと会って、からかって、笑って。
そうやってトキヤを一番近くに感じていれる時間が、いつまでも続くんだって、
そう、思っていた。
─ ─ ─ ─ ─
少しずつですが続きます。
長編がなかなか進まなかった時に更新していく予定です。
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