ファミレスの☆プリンスさまっ♪

□長所さがし
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『姉貴ー、差別っていけないことだと思いません?』


「またそれか」





ただいま休憩中。
私は、同じく休憩時間の姉貴と討論を繰り広げていた。
討論と言っても一方的に私が喋っているだけ。姉貴はうんざり顔でため息をついていた。


いや酷くないですか?
まぁいいや。




議題は、店内での差別について。
そしてその議題の中心となる人物は、他ならぬ一ノ瀬さんである。

今までを振り返ってみよう。







* * *





『あ、おはようございます一ノ瀬さん。今日もよろしくお願いします』


「…あぁ、誰かと思えば貴方ですか。今日も一日、迷惑をかけないようにしてくださいね」


『………』


「お!トキヤおはよっ!!」


「…朝からうるさいですよ音也。おはようございます」


『………』





差別その壱、私にだけまともに挨拶をしてくれない。







***





『あの、一ノ瀬さん。これはどこに置けば…?』


「…そんなことも知らないんですか?本当に馬鹿ですね貴方は。まぁ実際馬鹿だから仕方ないですよね」


『………』





差別その弐、私にだけものすごく毒舌(だからなぜに馬鹿を強調するんだ)。







***





「…皿を割ったのですか?不注意にも程があります。皿も数が限られているのですから、もっと大切に扱うべきです」


『す、すみません…』


「ごめんなさい一ノ瀬さん!今日も皿を割ってしまって…」

「あぁ、気にしないでください七海さん。それより、怪我はありませんでしたか?」


『………』





差別その参、他の人との差が激しすぎる。まぁ春歌は可愛いから仕方ないけど、それにしても酷い。





『って感じですよ』


「なんでアンタだけそんなに厳しいんだろうね。…一ノ瀬さんになんかした?」


『な、何もしてませんよ!あっちが勝手に貶してくるだけで、私は仲良くしたいと………、……思ってます』


「なんだその間は」





素早く姉貴に突っ込まれる。私は大きな溜め息をついて机に突っ伏した。
そりゃあ一緒に働いているわけだし、仲良くしたいに決まってる。

けれど、初対面の時でさえすごい形相で睨んできたし、挙げ句の果てには馬鹿扱いだ。好印象を持てるはずがない。





『嫌いじゃないんです。ただ、苦手なだけで…』


「うーん、成る程ねぇ。…要するに、一ノ瀬さんに対するその苦手意識をなくせばいいんでしょ?」


『…はい』





机と対面していた顔をゆっくりと上げると、なんとも頼もしい表情の姉貴と目が合った。

何か、いい案があるのだろうか。





「じゃあ、一ノ瀬さんの長所をなんでもいいから挙げなさい」


『……は?』





しかし、姉貴の言葉はあまりにも予想外なもので、一体何を仰っているのか理解できなかった。





『すみません、何て?』


「だから、一ノ瀬トキヤのいい所を言ってみなさいっつってんの!」



『んな無茶なっ!!』





いくらなんでも滅茶苦茶すぎる。
私が慌てて首を横に振ると、姉貴はテーブルを勢いよく叩いて立ち上がった。

少しビビった。





「あのねぇ名無し、アンタは一ノ瀬さんの悪い部分しか見てないでしょ?」


『……、あ、』


「それがダメなのよ!もっと一ノ瀬さんのいい所も見つけるべき!人の長所なんて、意外とたくさんあるんだから」





さあ考えなさい!と姉貴に言われて、私は頭を捻った。


確かに口が悪くて厳しくてドSだけど、考えてみれば、あるのかもしれない。

一ノ瀬さんの、いい所…。




「思いついた?なんでもいいから言ってみなよ」





姉貴に促され、私はおそるおそる口を開いた。






『一ノ瀬さんは……私と少ししか年が変わらないのに、私なんかよりも大人っぽくてしっかりしていて…。それに、いつも私達をまとめてくれて、大変なはずなのに、一ノ瀬さんはそんな素振りを全然見せないから…、その……す、すごいと思う。あ、それとねっ、』






──カシャンッ、


不意に聞こえた物音に、言葉を遮られた。
同じく呆気にとられている姉貴とともに、その音源をたどっていく。





『──…え、ッ!』




そこには、人が立っていた。

けれど、それはこの現場に最も居合わせてはいけないはずの人物。





「い、一ノ瀬さん…」





そう呟かれた姉貴の声が、虚しく部屋に響いた。










長所さがし





遅くなってすみません…!
次はトキヤ視点で書こうと思っています(予定)。











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