Long

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名無しは俺の恩人で。

誰よりも、大切な人だから。


だから、そばにいたいと思うのは不思議なことじゃない。

誰よりも近くにいたいと思うのは、当然のことなんだ。







「レン様、お食事ご一緒させてくださいっ!!」


「はぁ何言ってんの!?レンは私と食べるのよ!!」


「ずーるーいー!私が一緒に食べるのぉ!!」


「あはは、こんなに素敵なレディたちと食事ができるなんて光栄だな。ありがとう」


「きゃああああっ!!!!」





女の子特有の甘ったるい声を聞いて、俺は笑顔をつくる。これはいつものこと。わざとらしく密着させてくる身体も、この上目づかいな視線も。そんなレディたちに俺がぱちんとウインクをすれば、歓声が返ってくる。これらはすべて、俺の愛のかたち。

レディは俺に愛を注いでくれる。好きだと言って笑ってくれる。だから俺も、彼女たちに愛を注ぐんだ。それこそ、平等にね。俺は決して誰か一人の女性を愛することはしないから。

女性との距離は、これくらいが丁度いい。



これくらいが、ね。





『ほ、呆けてなんかないよ!』


「…………あ、」





レディたちと一緒にランチの注文をしていると、不意に耳に届いた彼女の声。弾かれたように後ろを振り向けば、手前のテーブルに見えた小さな背中。それだけで心があたたかくなってしまうなんてやっぱり俺らしくないけど、それでも嬉しくなって。

思わず声を漏らした俺を不思議に思ったのか、他のレディたちがこちらを見上げてどうしたの?と首を傾げた。そんな彼女たちに俺は何でもないよと答えたものの、視線はどうしても後ろへ向いてしまう。



そのテーブルで食事をとる小さな背中が名無しのものだったからという理由もそうだけど、彼女と一緒にいる相手──イッチーが見えたからだ。

彼女の前に座って同じように食事をとるイッチーを、以前名無しはただの幼馴染みと言っていた。だからこんな風に二人で昼食を食べることはごく当然のことなのだろう。
だけど俺には、名無しと話すイッチーがとても楽しそうに見えたんだ。さっきの自己紹介の時や、人気アイドルHAYATOと間違えて話しかけたレディへの態度とはまるで別人。冷静沈着で真面目なあのイッチーがここまで心を許せるのは、名無しが単なる幼馴染みだから?

それとも…………、





「っ、……ごめんねレディたち、今日のランチは個々でとってくれるかい?」


「え、どーしてですか!?」


「そんなぁ!」





なんとなくそれが気に入らなくて、俺は注文したパスタが乗ったプレートを持ち急いで彼女のいるテーブルへ向かおうとした。悲しそうに眉をひそめるレディたちにごめんねと謝りながら。しかしレディの勘というものは鋭いみたいで。





「また名無しのさんかなぁ?」


「今朝もレン様にちやほやされてたしー」


「しかも一ノ瀬さんともあんなに仲良くしちゃってさぁ」


「なんか生意気だよね、むかつくー」


「ねぇ、今度みんなで名無しのさん懲らしめよーよ」





ヒソヒソと俺の背後で密談するレディたち。だけどその内容は確かに俺の耳へ届いて。



(…………しまったな、)

こんなはずじゃ、なかったんだけど。
女性同士の争いは見たくないし、そうさせるつもりもなかった。それに名無しは他のレディとは違うんだ。


名無しは俺の、恩人なんだから。






「……ねぇレディ、お願いがあるんだ」






俺はレディの方へ向き直り、またにっこりと微笑んだ。すると彼女たちは、なぜか表情を固まらせて俺を見上げる。





「名無しの名無しは、俺の恩人なんだ。俺を救ってくれた、大切な人」


「………………っ、」


「もし、そんな彼女を傷つけるようなことがあれば、」







───俺は、許さないよ。




今自分がどんな顔をしているかわからない。

でも目の前のレディたちが怯えたような表情をしているから、きっと恐い顔をしているんだと思う。


けれど、名無しが彼女たちにいじめられるなんて想像したくなかった。彼女は誰よりも、笑顔が似合うのだから。名無しにはずっと、笑っていてほしいから。




だから俺は許さない。

どんな可愛いレディでも、それだけは絶対に許さない。










─ ─ ─ ─ ─



ちょっとどころではないくらいキャラが崩壊している気がします……

それとオレンジくんお久しぶりです。












2013.08.11.

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