Long

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ど、どうしようこの状況。




オレンジくんに突然抱き締められてから数秒が経過したけれど、私の頭は完全にフリーズしていた。
いくら彼が知っている人とは言え、異性に抱き締められるなんて初めてで。


しかもこんな大勢の前で(女子が怖い眼で見てるよ!)。羞恥プレイにも程がある。





『っ、あの……ッ!』





抵抗を試みるが、オレンジくんはびくともしない。むしろ腕の力は強くなる一方で、更に密着してしまう体に心臓が跳ねた。

だんだん息も苦しくなってきて、もういろいろと限界を感じた。




するとその時。






「いい加減にしなさい」






ひっくい声とともに、引き剥がされた私とオレンジくん。

私は急いでオレンジくんから離れて酸素を肺に送り込んだ。




仏頂面で目の前に立つトキヤが、今日は神様に見えました。





「レン、少しは場所をわきまえなさい。ここはアイドル養成学校なんですよ?入学早々おかしな問題を起こされたら困ります」


「……あぁゴメンゴメン。つい嬉しくてね」





トキヤは怖い顔でオレンジくんを睨んだけど、オレンジくんはただ苦笑をこぼしながら肩をすくめるだけだった。


トキヤに睨まれても平然としているなんて、すごい人だなオレンジくん。

私なんて土下座しちゃうからね。その場で。





「さぁ名無し、席に戻りますよ」





ほんとにトキヤの目がこっちに向いたからビビった。
マジで怖いそして眉間の皺が半端ない。

ギロリっていう音が聞こえたのは気のせいだよね、きっと。


冷や汗を流しながら私が小さく頷けば、トキヤは何も言わずに背を向けてスタスタと自席へ戻っていった。


とりあえずは助かったみたいだ。

ほっと胸を撫で下ろし、私も自分の席(まぁトキヤの隣なんだが)に向かおうとした。




けれど、いきなり誰かに手首を掴まれて。

びっくりして振り向けば、そこにはなぜか眉間に皺を寄せたオレンジくんが立っていた。


あ、なんかトキヤみたい。






『あの……?』


「…イッチーとは、どういう関係なの?」


『い、イッチー…?』


「一ノ瀬トキヤのこと。…なんか仲良さそうだなと思ってね」


『え?いや、だだの幼馴染みですけど……』






なんでそんなこと聞くんだろう?
それにしてもイッチーって……。なかなかユニークなニックネームだなぁ。

いろいろ考えながらもそう答えると、オレンジくんはまたニッコリ笑った。





「そっか。…んじゃ、名無し」


『は………っ!?』





オレンジくんは私の手首を自分の方へ引っ張り、あろうことか手の甲にキスを落とした。


再びフリーズする頭。





でも、女の子達の悲鳴と、トキヤの「レンっ!」という怒鳴り声は聞こえた。


そんな周囲に構わず、彼はパチンと綺麗なウインクをして見せて。






「これから一年間、よろしくね」






これからの学園生活は、なんだか大変なことになりそうです。











2012.05.30.

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