Long
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確信なんて、なかった。
自分の周りにも教室にも、たくさんのレディ達がいて、彼女も同じくその中の一人だったのに。
けれど彼女と目が合った瞬間、大きく心臓が音を立てた。
……嘘だ。
でも確かにこの感覚は、
「れ、レン……?」
「どうしたの?具合悪いの!?」
他のレディ達の声なんて耳に入ってこない。俺はただ、目の前の彼女を見つめていた。
そして、自分でも気づかないうちに足が動いていて。
気づかないうちに、彼女の名前を呼んでいて。
『オレンジ、くん……?』
気づかないうちに、名無しを抱き締めていた。
周りでレディ達の悲鳴が聞こえたけど、今はそれどころじゃない。
夢にも思わなかった。
また彼女と会うことができるなんて、一体誰が想像しただろうか。
どうしよう。
すごく、嬉しい。
『あ、の……っ、苦しッ、』
わかってる。俺だってレディに痛い思いをさせたくなんかないよ。
けど、ごめん。制御できないんだ。
この力も。この感情も。
だって、いつもの俺からなんて考えられないくらい動揺して、彼女にまわるこの腕さえ震えているのだから。
みっともないな、こんな俺。
カッコ悪い。
(でも、もう少しこのままで、)
今はキミのぬくもりを、感じていたいだけなんだ。
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この人誰だ。
2012.05.21.