Long

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春、それは出会いの季節。


私、名無しの名無しは今、新しい一歩を踏み出そうとしています!






『いやー、まっさか私がSクラスだなんて思わなかったよー!』


「まったくですね。私もまさか貴方と同じクラスになるとは思いませんでしたよ。というか癪に障ります」


『なっ、酷くない!?それだけの実力者ってことですー!』


「…貴方と同レベルだと思うと、反吐が出ます」


『ふっふっふ、いつかそう言ったことを後悔させてやるんだからね一ノ瀬トキヤ!』






私の目の前にいるこの超絶失礼男は一ノ瀬トキヤ。私の幼馴染みで、いわゆる腐れ縁ってやつだ。私と同じSクラス。私と同じ、ね!大事なことだから二回言いました。





そう、私は今日からここ、早乙女学園の生徒なのです!

競争率200倍のこの学園に入学できたことが奇跡なのに、私のクラスはその中から成績優秀者だけが集められたSクラスだった。


誰が驚くって自分が一番びっくりだよ!通知が来たときなんか絶叫でしたよ。隣にいたトキヤに怒鳴られるくらいに(その後トキヤに見せたらこの世の終わりだと言うような表情だった)。




私は昔から音楽は好きだったし、それなりに興味があった。

けれど大きなきっかけとなったのは、ひとりの少年との出会いだった。
ある公園で泣いていた少年。その時聴かせてくれた音楽が、今でも忘れられない。
それくらいその歌は綺麗で、優しくて、あたたかくて。


いつか私も、人の心を動かすような、そんな曲をつくろう!そう思った。

だから、あの時会った彼には感謝しているんだ。
あの、オレンジくんに。





何はともあれ、今日から楽しい学園生活の始まりだ。さすがは芸能専門学校、個性豊かな人達ばかり。これから何が始まるのか、今から楽しみで仕方ない。






「…なんか、廊下が騒がしいですね」


『ほんとだねー。何かあったのかなぁ?』






ざわざわ、と。
廊下の方から騒がしい声が聞こえた。主に女子の。

あーあれか、女子なら誰もが振り向くようなイケメンさんが、女子軍を引き連れながら廊下をお通りになられているのか。

まぁ興味ないけどね。


……しかしこの騒ぎ声、だんだん近づいてきてないか?




そしてガラッと開かれるドアとともに入ってくる人影。
同時に、教室にいた女子達が騒ぎだした(耳が痛いっす)。





「あぁ、やはりレンでしたか」


『れん……?』


「ええ。神宮寺レンですよ、知らないのですか?」


『いや知ってるよー。神宮寺財閥の御曹司でしょ?すんごい人気だねぇ』





トキヤとそんな会話をしてから、私は大勢の女子に囲まれている彼に目をやる。

おお、セクシーだなぁ…。こりゃ女子にキャーキャー言われても無理はない。



でも、なんでだろ。

誰かに、似てる。







「…………っ、!」


『……あ、』







やば、目が合っちゃった!

つい人様の顔をじろじろと見てしまったのが悪い。私は慌てて視線を逸らそうとしたけど。



相手がなぜか驚いたように目を見開いていたから、それはできなくて。


しかも、





『え、なんで……!?』





こちらに、歩み寄ってくるんですけど!



ゆっくり、一歩ずつ。だけど脚が長いせいで、その一歩が大きすぎる。

その間に他の女子が誰も動かなかったのは、たぶん、今の彼が先刻みたいな余裕のある彼ではなかったから。




そして、あっという間に彼は私の前に立っていた。

私は結局その場に立ち尽くすのみで、大きく揺れる彼の瞳からなぜか目が離せなかった。







「名無しの、名無し……?」


『は、い……そうです、けど…』







彼は、私の名前を知っていた。


私がゆっくり頷けば、彼は、嬉しそうに微笑んで。




その顔が、昔の少年と重なって。





私は無意識に、彼の名を呼んでいた。







『オレンジ、くん……?』


「っ、やっと会えた……」







次の瞬間、私はオレンジくんの腕の中だった。










― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



もうなんかすいません。
アレです。やっぱり私の中でトキヤは幼馴染みポジションなんですよね!
別の連載とは全く異なりますので、ご了承下さい…<(_ _)>











2012.05.13.

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